越前国坂井郡(現在の福井県北部)にあった東大寺の田地の様子を描いた図。田地は画面中央付近、樹木の生い茂る山と、魚が泳ぐ湖に挟まれた地区にあり、その部分の朱線で囲われた寺領内の方形区画には地名や面積などが書かれている。高串村は、もともと現地に住む一般の民戸が耕作していたが、それがいったん他の所有となり、さらに東大寺へと売却されたものであった。この所有権の移動を確認する目的で越前国司(こくし)が東大寺とともに作成したのが本図である。奈良時代の開田図の中では絵画的表現が豊かで、動物(魚)の絵まで描かれるのは珍しい。
(野尻忠)
奈良博三昧―至高の仏教美術コレクション―. 奈良国立博物館. 2021.7, p.248, no.34.
越前国坂井郡(現在の福井県北部)にあった東大寺領荘園の図で、天平神護2年(766)10月21日の日付を持つ。画面中央付近、樹木の生い茂る山と、魚が泳ぐ湖に挟まれた地区に荘園があった。その部分の方形区画には地名や面積が書き込まれている。
(野尻忠)
奈良時代に、越前国の東大寺領庄園の開発状況を描いた絵図。寺領検田の際に作成されたもので、もとは正倉院に伝来した。これは制作当時の案。北を上にして条里を墨書で図示し、具墨に丹紫を交えて江・山・樹木を描き、水中には象徴的に魚を大きく描き加えている。奈良時代の山水図としても注目される。水路は丹紫で示されている。図の左には、越前国司と東大寺検田使の位置案がある。この庄園からの収入は、東大寺の大修多羅衆の経費に宛てられた。
(西山厚)
天平, 1998, p.242

