越前国坂井郡(現在の福井県北部)にあった東大寺領荘園の図で、天平神護2年(766)10月21日の日付を持つ。画面中央付近、樹木の生い茂る山と、魚が泳ぐ湖に挟まれた地区に荘園があった。その部分の方形区画には地名や面積が書き込まれている。
(野尻忠)
奈良時代に、越前国の東大寺領庄園の開発状況を描いた絵図。寺領検田の際に作成されたもので、もとは正倉院に伝来した。これは制作当時の案。北を上にして条里を墨書で図示し、具墨に丹紫を交えて江・山・樹木を描き、水中には象徴的に魚を大きく描き加えている。奈良時代の山水図としても注目される。水路は丹紫で示されている。図の左には、越前国司と東大寺検田使の位置案がある。この庄園からの収入は、東大寺の大修多羅衆の経費に宛てられた。
(西山厚)
天平, 1998, p.242