中央に天照大神(あまてらすおおみかみ)(伊勢(いせ))の神号と託宣(たくせん)、右に八幡神(はちまんしん)(岩清水(いわしみず))、左に春日神(かすがしん)の神号と託宣を書き記したもので、それぞれ正直・清浄・慈悲(じひ)を説く。東大寺の池に託宣が現れたという伝承があり、中世末以降信仰された。
題箋
三社託宣とは、中央に天照大神(伊勢)の神号と託宣を、その右・左にそれぞれ八幡神(石清水)と春日神の神号と託宣を書き記したものである。中世末から近世にかけて数多く作られ、正月の床の間の掛け物などに使用された。どの写本でも、三神の名を上方に大きく書き、それぞれ名の下に託宣文を二行割りで書くという基本的な構成は共通するが、字句は写本によって異同がある。三社託宣の起源は明らかでないが、興福寺大乗院の経覚(きょうがく)(一三九五~一四七三)が、坊官等(ぼうかんら)の所望に応じて三社託宣をさかんに揮毫(きごう)していたことが、その日記『経覚至要抄』に記述されており、その頃には形式が整っていたとみて良い。十五世紀頃の書写と推定される本品は、現存する三社託宣の中ではかなり古い時期に属する貴重な品である。
(野尻忠)
SHIBUYAで仏教美術ー奈良国立博物館コレクションより. 渋谷区立松濤美術館, 2022.4, p.113-114, no.62.

