近代日本画の巨匠・横山大観(よこやまたいかん)(1868~1958)初期の代表作。西洋絵画の遠近法を強く意識した深い奥行きをもつ画面の中に、秋の草花が咲き誇る武蔵野の景観を装飾性豊かに描いており、大観が描く現存最古の富士山の絵としても大変著名な作品である。
大観が本図を描いたのは、京都市美術工芸学校の教員を務めていた明治28年(1895)のこと。当館の前身である帝国奈良博物館は、まさにこの年に開館している。その開館当初のコレクションには「浄瑠璃寺木造吉祥天立像」や「禅林寺山越阿弥陀図」など大観が描いた仏像・仏画の模写が4件含まれているが、これらの模写事業は明治政府が当時進めていた文化財保護政策の一環として、大観ら開校して間もない東京美術学校(現東京藝術大学)の卒業生が依頼を受けたものだった。
大観が当館開館の年に描いた古画模写と本作品が、100年以上の時を隔てていずれも奈良博コレクションとして再会したことに、深い縁を感じずにはいられない。
(谷口耕生)
奈良国立博物館だより第118号. 奈良国立博物館, 2021.7, p.8.
京都市美術工芸学校(現・京都市立芸術大学)の教員を務めていた横山大観(よこやまたいかん)(一八六八〜一九五八)が、奈良博開館と同年の明治二十八年(一八九五)に京都博覧会主催日本青年絵画協会第四回共進会へ出品した作品。「秀麿」の落款をもつ大観の初期の代表作である。富士を背景として秋草が咲き乱れる武蔵野(むさしの)の伝統的な画題を取り上げ、西洋画の遠近法を踏まえた奥行きの深い構図と、狩野派(かのうは)の筆致や琳派(りんぱ)の装飾的な草花表現など古画学習の成果を融合させ、全く新しい画面を創出している。大観は生涯に数多くの富士山を描いたが、本品はその最も早い作でもある。
(谷口耕生)
奈良博三昧―至高の仏教美術コレクション―. 奈良国立博物館. 2021.7, p.277, no.222.

