火舎は香炉(こうろ)の一種で、この形式は密教で用いられる。通常、火舎の両側に三口ずつ六器(ろっき)を置き、さらに外側に飯食器(おんじきき)一対と華瓶(けびょう)一対を置く。このセットを一面器(いちめんき)といい、本格的な修法を行う大壇では四辺にそれぞれ一面器を置く。本品は三脚の炉に甑(こしき)という輪形の部材を重ね、蓋を被せている。蓋は二本のくびれで三段に表し、上段と中段にそれぞれ三個の飛雲形の煙出しを透彫している。蓋上部には宝珠形のつまみを作っている。火舎の蓋は時代が下るにつれ円筒状に盛り上がり、肩が張る傾向があるが、本品の蓋は比較的穏やかな隆起を見せている点が古式である。
(内藤栄)
奈良博三昧―至高の仏教美術コレクション―. 奈良国立博物館. 2021.7, p.264, no.135.
火舎(かしゃ)は香炉(こうろ)の一種で、主として密教で用いられる形式である。通常四面器や一面器の中央に置かれ、左右に六器(ろっき)、華瓶(けびょう)、飲食器(おんじきき)を並べ、諸尊を供養(くよう)するのに用いられた。
本品は、蓋、甑(そう)、火炉からなる中世以降盛行した重層式の火舎香炉である。蓋は3段に甲盛りし、頂上に宝珠(ほうじゅ)形の鈕(ちゅう)を配する。上段及び中段の各3箇所に交互に飛雲形の煙出しを透かし彫りしている。甑は鐔(つば)つきで、口縁に小さな立ち上がりをつける。火炉も鐔つきで、持ち送りを有する三脚の猫脚(ねこあし)を底部につけている。紐帯の鋭い作りや小振りの宝珠鈕、獣脚が細く腰高な点、甲盛りが穏やかな点は古様を示しており、秀麗な火舎として看過しがたい遺例である。
(清水健)
古玩逍遥 服部和彦氏寄贈 仏教工芸. 奈良国立博物館, 2007, p.58, no.37.

