阿弥陀如来の極楽浄土を描く絵画。本図は浄土を俯瞰(ふかん)するように緻密に描かれ、主尊である阿弥陀三尊も比較的小さく表されるところに特徴がある。浄土には多数の菩薩衆が描き込まれ、表情や動作なども一人一人丁寧に描き込まれている。現存する日本の阿弥陀浄土図のなかでは極めて稀な画面構成であるが、描写から製作は十三世紀の初頭頃に遡ると思われる。
本図の中央には左右とも第一・二指を胸前で捻じる転法輪印(説法印)の阿弥陀を中心とした三尊の座る壇があり、周囲には阿弥陀を供養する菩薩衆が多数描かれている。壇の背後にある楼閣中には空座があり、その前に合掌する菩薩は、座を去った阿弥陀を目で追うかのように後ろを振り返っている。極楽浄土における諸菩薩による阿弥陀への讃嘆供養の様子は諸経に記されているものではあるが、これを阿弥陀浄土図に目立って取り上げる例は少ない。本図の典拠を探すと、その内容は、源信『往生要集』「大文第二欣求浄土」に説かれる「極楽十楽」(極楽往生の十の喜び)のうち「見仏聞法楽」や「随心供仏楽」に説かれる様子によく一致している。そのため、本図の浄土の描写は『往生要集』の記述を参考に整えられた可能性が考えられる。ただし一方で本図には『観無量寿経』の十六観を意識した図像が盛り込まれ、描かれる図像は宋代に成立した『観経十六観変相図』と多く一致することから、宋代の図像を参考にしながら構成された可能性も高い。こうした絵画の成立は、同じく源信の記した『極楽六時讃』を典拠にした造形が行われた十二世紀前半ぐらいには遡る可能性が考えられ、大陸の図像を参照しながらも、日本で編まれた『往生要集』を彷彿させる内容の阿弥陀浄土図が作られたと考えることが出来る。
(北澤菜月)
源信 地獄極楽への扉. 奈良国立博物館, 2017.7, p.289, no.96.
阿弥陀如来が住む極楽浄土を描く。複雑な楼閣の中央に阿弥陀如来が坐り、周囲を菩薩衆が囲む。多くの菩薩衆が精細に描きこまれており、阿弥陀の説法を聞いたり、音楽を奏でたりするほか、菩薩同士が楽しそうに会話をしたり、体を横にしてくつろいだりする様子も見られ、極楽での暮らしが生き生きと表されている。
(北澤菜月)
みほとけのかたち 仏像に会う. 奈良国立博物館, 2013.7, p.128, no.84.






