金剛界(こんごうかい)五仏(ごぶつ)(五智如来)を打ち出した金銅(こんどう)板五枚を繋ぎ宝冠としたもの。師から弟子に秘法を授ける密教の伝法(でんぽう)灌頂(かんじょう)の儀式において、受者(弟子)が戴くもので、これによって大日如来の位に昇るとされた。
題箋
冠中に五智如来の化仏を安じた宝冠。密教の潅頂(かんじょう)の儀式では、師が弟子に宝冠を被せ、それを鏡に写し出してみせることによって、自らが大日如来となったことを知らしめる作法がある。この宝冠は、その際に用いるもの。五枚の銅板に打ち出しと線刻で金剛界五仏を表わして鍍金を施し、これを蝶番でつないで冠形に仕上げている。潅頂用の五智宝冠は、後世の遺品では、紙で作り、彩色で五仏を描いた簡略なものが多いが、金銅製の本品は、おそらく現存最古の作例と見られる。
(関根俊一)
密教工芸 神秘のかたち, 1992, p.236

