錫杖は僧侶が修行や法要の場で用いる杖であり、錫杖頭の鐶(かん)がゆれることで音を発する。本作は「元中四年十二月廿一日」、「高天寺金堂尺丈」との刻銘を伴う基準作であり、大ぶりな造形が力強い。
題箋
縦長の輪をもつ錫杖頭。輪は左右とも上下2ケ所にくびれをつくり、それぞれ外側に三日月形を表している。左右の輪は上部で接して六角二条の紐でくくられ、先端は蕨手状に巻いて上に五輪塔を奉安する。輪の下方は柄の先端に六角二条の紐でくくられ、蕨手状に巻いた端に宝瓶をのせている。柄は頂上に宝塔(相輪欠失)を置き、中ほどに紐をくくり、基部に蓮華座を備えている。柄に「元中四年十二月廿一日」、「高天寺金堂尺杖」という刻銘がある。南北朝時代の錫杖頭の基準作例として貴重である。
(内藤栄)
奈良国立博物館の名宝―一世紀の軌跡―,奈良国立博物館.1997.4,p.288.

