中央の幅に釈迦如来、その向かって右に獅子(しし)に乗る文殊菩薩(もんじゅぼさつ)、左に白象に乗る普賢(ふげん)菩薩を表す三幅セットの釈迦三尊像。文殊と普賢は、それぞれ南方の人らしき侍者を伴って表される。普賢が乗るのは 『法華経』(ほけきょう)に説かれる六本の牙をもつ白象である。釈迦の台座の下と背後には涌雲(ゆううん)が表され、文殊・普賢はいずれも雲に乗り飛来するように描かれている。
獅子がうずくまる釈迦の台座や、つり上がった眉、長い爪といった表現などをみると、中国の宋代に描かれた仏画の表現を倣(なら)った絵画と考えられる。おそらくは、台座や侍者を含めた三尊については、中国で描かれた釈迦三尊の画像を写したものであろう。天台寺院である滋賀県の聖衆来迎寺(しょうじゅらいごうじ)に長く伝来した。
(北澤菜月)
奈良博三昧―至高の仏教美術コレクション―. 奈良国立博物館. 2021.7, p.244, no.7.
獅子がわだかまる宝壇上に坐す正面向きの釈迦如来像を中心にして、向かって右には獅子に坐す文殊菩薩像、向かって左には六牙白象に乗る普賢菩薩像を表している。いずれもが涌雲か飛雲に乗って虚空に浮かんでいる。釈迦は頭光と円光を負い説法印を表し、金身に赤衣を着けている。文殊菩薩は黄肉身、身には袈裟をまとって両手に如意を執る。普賢菩薩は白肉身、身に条帛、裙と天衣を着けて白蓮華を持している。
宋元画の影響の強い作品で、たとえば釈迦の低い肉髻、面長の顔貌、強くしなる眉目、両側に二線を引いて表す鼻梁、長い爪などの特徴ある表現は其処に起因する。また両脇侍の装飾的な宝冠、複雑な鞍の形式、文殊菩薩の袈裟着用などにも宋元画に倣う。各尊の着衣上に截金文様ではなく細かい金泥文様を配しているのもそうした傾向の現れである。なお、金具を表するのに胡粉下地に金泥を重ね、厚みを持たせていわゆる金泥盛上彩色とするのは、鎌倉時代末期以降好んで用いられた技法である。
(梶谷亮治)
奈良国立博物館の名宝─一世紀の軌跡. 奈良国立博物館, 1997, p.314, no.163.

