僧侶(そうりょ)が戒(かい)を守るために行う布薩(ふさつ)の儀礼に際し、手を清めるのに用いた水差(みずさ)しで、 下膨(しもぶく)れの胴部に特徴があり、中世以降多くの作例が伝わる。底裏の針書銘(はりがきめい)から奈良市の菩提山(ぼだいさん)正暦寺(しょうりゃくじ)伝来の可能性がうかがわれる。
題箋
布薩とは説戒の意で、僧侶が毎月15日に布薩堂などに集まって戒本を説き、戒を守らなかった者がある時は懺悔させる法会。布薩形水瓶は法会の最初に心身を清めるため手を洗うのに用いるもので、仏前供養具として用いられる水瓶とは性格が異なる。布薩形水瓶は仙盞形水瓶をもとにわが国で創案されたものと考えられる。本品は典型的な形式の布薩形水瓶で、高台に下膨れのたっぷりした胴をのせ、肩に短めの注口をつけ、口縁が朝顔形に開いた頸をもつ。当初は尖台(飲み口付きの蓋)を具していたものと推定される。注口は全面に稜を立て、背面を三方面取りを施しており、基部に菊座を据えている。総体に厚手に作られ、胴張りも顕著で重厚な作風を見せている。
(内藤栄)
奈良国立博物館の名宝─一世紀の軌跡. 奈良国立博物館, 1997, p.288, no.48.

