柄の先端に瓶形(びょうがた)の重しをつけたいわゆる瓶鎮(びょうちん)柄香炉(えごうろ)。柄香炉は法要において導師(どうし)が手にして香を焚(た)くのに用いた。柄の裏面に享禄元年(一五二八)に権少僧都(ごんのしょうそうず)長政(ちょうせい)が寄進したことを示す朱漆銘(しゅうるしめい)がある。
題箋
銅造、鍍金を施した瓶鎮式の柄香炉。鍛造製の火炉は口縁を朝顔形につくり、縁まわりに立ち上がりを付す。底は別作で菊弁風の立上りをもつ平底で、火炉から枘を出して固着する。台は菊花形で表面を甲盛とし、蕊形座金を重ねて敷茄子形を据え、これに枘の弓金の尖端を重ねて火炉底部から鋲を通し、台裏でかしめ留める。枘は火炉に弓金を添わせて胴二ヶ所で鋲留めで固定するが、上部の鋲は頭部を雲形につくり、蓋留めを兼ねている。枘は厚手で巾が狭く、枘元には当初装着されていた心葉形金具を留めていた鋲孔一個を残し、表全面に魚々子地線刻唐草文を飾っている。先端は直角に屈折して足をつくり、その先は菊座金付の魚々子地線刻唐草文を飾った花形座で受け、そこに六角宝珠付の瓶形鎮子を据える。心葉形金具、蓋を欠失しており、枘香炉としてはいさゝか心もとない形姿を見せるが、重厚な作りと端正な姿を残しており制作は室町時代かと考えられる。枘の裏面に「亨禄元年十一月日權少僧長政寄進之」、菊花形台の裏面に「當住、長慶法印」の朱漆銘があり、寄進時の年紀ではあるが、亨禄元年頃の制作として間違いない。この品の制作年代の下限を確実に知ることが出来るのは貴重である。
(阪田宗彦)
密教工芸 神秘のかたち, 1992 p.197-198

