『理趣経(りしゅきょう)』は真言密教(しんごんみっきょう)の根本経典(こんぽんきょうてん)の一つで、一切の事物の本性(ほんしょう)が清浄であることを説く。その内容を描いた曼荼羅(まんだら)は、平安初期に円仁(えんにん)・ 宗叡(しゅうえい)によって中国から請来(しょうらい)された。これはその図様を写し伝えたもの。
題箋
平安時代初期、中国・唐から多くの密教経典(みっきょうきょうてん)をもたらした入唐八家(にっとうはっけ)の一人、宗叡(しゅうえい)(八〇九~八八四)が請来(しょうらい)した理趣経十八会曼荼羅(りしゅきょうじゅうはちえまんだら)の白描図像(はくびょうずぞう)。序説と十七段からなる不空訳『大楽金剛不空真実三昧耶経般若波羅蜜多理趣釈(だいらくこんごうふくうしんじつさまやきょうはんにゃはらみたりしゅしゃく)』の各段に基づいて構成される十八図の曼荼羅を並べ、その後に五大虚空蔵(ごだいこくうぞう)像、仏眼曼荼羅(ぶつげんまんだら)、大仏頂曼荼羅(だいぶっちょうまんだら)、愛染明王(あいぜんみょうおう)像の四図を加えて一巻としている。宗叡請来原本は現存しないが、ほぼ同様の構成をもつ写本として安貞二年(一二二八)の奥書をもつ京都・醍醐寺(だいごじ)本が知られており、本品もこれに近い時期の成立と考えられる。
(谷口耕生)
SHIBUYAで仏教美術ー奈良国立博物館コレクションより. 渋谷区立松濤美術館, 2022.4, p.106, no.18.

