金剛盤(こんごうばん)は、五鈷鈴(ごこれい)、五鈷杵(ごこしょ)、三鈷杵(さんこしょ)、独鈷杵(とっこしょ)の一揃いの法具をのせるための脚付きの台で、密教の修法(しゅほう)を行う壇(だん)の中央前寄りの位置に置かれる。本品は、前方側の突出の小さい四弁花形の盤面を有し、三方に猫脚(ねこあし)形の台脚を取り付ける。盤の裏面に刻まれた銘文(めいぶん)から、西大寺(さいだいじ)(奈良市)真言堂(しんごんどう)の東仏壇の仏具として、正和三年(一三一四)に作られたことがうかがえる。分厚い盤面に太作りの縁取りを有する造形は、銘文の示す鎌倉時代後期の作風によく一致する。由緒の明らかな金剛盤の基準作として意義深い品である。
(三本周作)
奈良博三昧―至高の仏教美術コレクション―. 奈良国立博物館. 2021.7, pp.263-264, no.132.
金剛盤は修法をおこなう壇や卓の上に置かれ、金剛鈴と金剛杵をのせる台として用いられる。通常、三角形に近い不整の四方花先形の盤に三脚を付ける形をとる。本品は大振りな作りの金剛盤で、胎面は厚みを持つ。前縁の出が小さいのに比べ後縁の張り出しが強く、縁の稜は鋭く、断面が三角形で内側に一条の添縁を表す。脚は猫足形で重厚な作りを見せる。盤の裏面に刻銘があり、正和3年(1314)に奈良・西大寺真言堂の東仏壇具として制作されたことがわかる。鎌倉時代の金剛盤の基準作として貴重。
(内藤栄)
奈良国立博物館の名宝─一世紀の軌跡. 奈良国立博物館, 1997, p.290, no.60.
銅鋳製鍍金。総体に大振りな金剛盤で、厚手な盤面や鋭い縁取り、三方に配された重厚な獣脚の形姿などに鎌倉時代の特徴がよくあらわれている。裏面に以下のような刻銘があり、西大寺真言堂の東檀所用具として、正和三年(一三一四)に制作されたことが知られる。なお、銘文には、この時同時に調製された一連の密教法具の名称・員数等をも列挙しており、当時の大壇具の制式や規模がわかる点で大変貴重である。「西大寺 真言堂東壇仏具事/鈴【七/寸】五鈷三鈷独鈷 金剛盤/閼伽器四具【二十/四口】 〓垸四具【二十/四】/火舎四口【在蓋甑】 花瓶五口/灑水器一口【在蓋/并座】 塗香器一口【在蓋/并座】/輪一【在/座】 羯磨四【在/座】/橛四本 香呂一枝/香筥一 念珠一連【菩提子半装束/在箱】/磬台一【在磬/鐘木】/正和三年【甲寅】六月六日記之」
(関根俊一)
密教工芸 神秘のかたち, 1992, p.229

