鏡面(きょうめん)に見立てた銅円板に、半肉状(はんにくじょう)に打ち出した十一面観音を鋲留(びょうどめ)した懸仏。観音は右手に花枝をとり、左手を垂下させている。薄い肉取りや穏やかな像容に、平安時代後期の特徴が見られる。
題箋
薄手の銅円板に、十一面観音坐像を表した銅板を鋲留めした懸仏。像は蓮華座に結跏趺坐(けっかふざ)し、右手に花枝(花は欠失)をとり、左手は垂下している。頭上に二段に十面を表す。頭光と身光は本体とは別作で、一重円相光の輪郭のみを銅板から切り透かした技法は平安後期の懸仏に通有のものである。顔や頭上面などの起伏は丹念に打出すが像全体は大づかみに打出し、衣文や火焔などの細部を蹴彫で表現している。背面の上下二ヶ所に薄手の素鈕を付けて奉懸用としている。伝来は未詳であるが、技法、様式とも平安後期の特色をよく示し、優れた作域を見せる当代懸仏の優品である。
(内藤栄)
奈良国立博物館の名宝―一世紀の軌跡―,奈良国立博物館.1997.4,p.284.

