迦楼羅王はガルダ(Garuḍa)というインド神話に登場する龍を食べる巨大な鳥で、仏教では釈迦の眷属(けんぞく)の八部衆や、千手観音の眷属の二十八部衆の中の一尊である。龍を食べることから、病気や、風雨、落雷などを除く力があるとされ、迦楼羅法という修法もある。その姿は本像のように鳥頭人身(頭は鳥で体は人間)で翼を持ち、横笛を吹く姿で表される。
本像は京都の愛宕念仏寺(おたぎねんぶつじ)に伝来した二十八部衆の内の一体で、本像を含む四体が、縁あって当館の所蔵に帰した。その均整のとれた姿から鎌倉時代の作と考えられるが、鎌倉以前の迦楼羅王像は、極めて珍しくその点においても貴重である。
館蔵品となってから修理を行い、前の修理で矧目(はぎめ)からはみ出した接着剤を取り除いて表面をきれいにするなど、より制作当初に近い姿を取り戻した。しかし、今回の修理では、欠けてなくなった右手先はあえて補わなかった。文化財の修理はオリジナルの尊重が原則で、必要以上に後世の創作を加えないという方針に沿ったからである。ご覧になった方々には、かつてどんな風に笛を吹いていたのか、想像を膨らませていただきたい。
(岩井共二)
奈良国立博物館だより第126号. 奈良国立博物館, 2024.7, p.8.
仏法を守護する迦楼羅はインドの霊鳥・ガルーダに由来する。本像は千手観音(せんじゅかんのん)を守護する二十八部衆の一尊で、本来は両手を用いて横笛を吹く姿であった。静かな立ち姿だが、毒蛇をも食らう強大な力を内に秘める。
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