カヤ材の一木彫像で、背面から内刳(うちぐり)を施し背板を嵌(は)める。肉身は漆箔で、衣部は赤色に彩色される。着衣には平安時代前期の木彫像に多くみられる翻波式衣文(ほんぱしきえもん)が刻まれるが、奥行の少ない体軀(たいく)や浅い表面の彫りから、平安時代中期頃の制作と考えられる。一方、平安時代の木彫像の通例とは異なり、やや窮屈そうなプロポーションや、耳の特徴的な形は、飛鳥時代後期(白鳳期)の金銅仏にみられることから、古仏を模した可能性が考えられる。像内には、中世の書体とみられる「かすが」の墨書(ぼくしょ)銘がある。
(岩井共二)
なら仏像館名品図録. 奈良国立博物館, 2022, p.121, no.158.
肉身(にくしん)は金色(こんじき)とし、着衣は赤色に彩る。肘を腋(わき)につけた窮屈(きゅうくつ)な姿勢や、同じカーブを描く衣文を並べるところ、特徴ある耳の形など、白鳳(はくほう)期の金銅仏(こんどうぶつ)を想起させる。像内に「かすが」の墨書(ぼくしょ)が認められる。
音声ガイド
近年の購入品である。かなりユニークな作風を示す像で、如来であることはわかるものの、両手先を失うため何という如来なのかはわからない。肉身は漆箔(しっぱく)仕上げで金色とし、着衣は赤く彩っている。肘(ひじ)を脇につけた窮屈な姿勢で、同じカーブを描く弧状の衣の襞(ひだ)を並べるところ、あるいは特徴ある耳のかたちや風貌は、東京・深大寺(じんだいじ)釈迦如来倚像(しゃかにょらいいぞう)や和歌山・親王院(しんのういん)伝阿閦如来立像(でんあしゃくにょらいりゅうぞう)など、飛鳥時代(あすかじだい)(白鳳期(はくほうき))の金銅仏(こんどうぶつ)を想起させる。
その一方、峰状の襞と鎬(しのぎ)立った襞とを繰り返す、いわゆる翻波式衣文(ほんぱしきえもん)を刻むことや、カヤ材を用いた一木彫像で、背面から内刳(うちぐり)を施して背板(せいた)を嵌(は)める構造などは、平安時代前半期の作例に通ずる。ただし体部の奥行きは比較的浅いため、実際の制作期は平安時代中期まで降ると見るべきであろう。
像内には中世の書風が示す「かすが」(春日)の文字が墨書され、いずこかの春日社に関わる作品であったかもしれない。
(岩田茂樹)
奈良国立博物館だより第112号. 奈良国立博物館, 2020.1, p.8.







