クワ製の手箱。蔓(つる)を伸ばす瓜を蓋表から側面にかけて彫刻している。クワ特有の木目を生かしており、側面では身と蓋の材の木目がつながるように配慮されている。彫刻は浅い彫りながら立体感がある。器面全体に摺漆(すりうるし)を施す。木内省古(一八八二〜一九六一)は半古(はんこ)の次男。明治三十七年(一九〇四)に正倉院御物整理掛に出仕したが、その年に整理掛は閉鎖された。省古は正倉院宝物から学んだ玳瑁貼(たいまいば)りや木画(もくが)技法を自身の創作に活かしている。昭和二十七年(一九五二)文化財保護委員会より指定無形文化財として「木画及び撥鏤(ばちる)」の技術者に選定された。
(内藤栄)
奈良博三昧―至高の仏教美術コレクション―. 奈良国立博物館. 2021.7, p.279, no.231.
蔓(つる)を伸ばす瓜を、蓋表から側面にかけ表したクワ材製の手箱(てばこ)。印籠蓋造(いんろうぶたづくり)の長方形の箱で、蓋表は柔らかく隆起し、縁に塵居(ちりい)(わずかな平面)を作り、側面の角は丸みを持たせている。材は、蓋では天板一枚と側面板四枚、身も底板一枚と側面板四枚から作られるが、蓋から身にかけ側面材の木目はつながるように木取(きど)りされている。蓋、身とも合口部(あいくちぶ)は置口(おきぐち)風に側面材を彫刻している。蓋表から左側面及び手前側の側面にかけ、瓜文を一段低く彫り窪(くぼ)め、浮彫(うきぼり)風に表している。彫り口は浅いが、鑿痕(のみあと)を残すことで、立体感を生んでいる。器面全体に摺漆(すりうるし)を施し、木目を見せる仕上げとしている。身の底裏に「省古作」の陰刻銘(いんこくめい)があるほか、附属の桐箱の蓋表に「瓜畑彫嵌 手筥」、蓋裏に「省古作(印)」の墨書がある。なお、図案「瓜」は本品の図案であったと考えられる。省古の父・半古はほぼ同図様の作品(桑瓜畑図像嵌料紙箱(くわうりばたけずぞうがんりょうしばこ)〔西川家旧蔵〕)を作っており、省古はその図様(ずよう)を手本にして、この作品を制作したと考えられる。半古の作品では瓜の図様は象嵌技法によって装飾されているが、本品は彫刻であり、趣が異なる。
(内藤栄)
名匠三代―木内喜八・半古省古の木工芸―, 2015, p.43

