正倉院宝物の紫檀銀絵小墨斗(したんぎんえのしょうぼくと)(中倉一一六)を模したもの。シタン材製で、原宝物は表面に銀泥(ぎんでい)で飛鳥などの文様(もんよう)が表されるが、本品は金泥(きんでい)で文様を描いている。箱書(はこがき)によれば、原宝物は東京の赤坂離宮(あかさかりきゅう)内(後に青山御所、工部大学校跡に移転)に設けられた宮内省正倉院御物整理掛(しょうそういんぎょぶつせいりかかり)で正倉院宝物の整理が行われていた明治三十七年(一九〇四)に塵芥(じんかい)中から発見されたもので、半古自身がこれを修補したようである。現在宝庫に納められた原宝物は、側板の一面と糸車(いとぐるま)とが新補で、旧物は昭和三十年代にやはり古裂(こぎれ)塵芥中から発見されており、この新補部分は半古の手によるものと思われる。原宝物では糸車部分は鹿角(ろっかく)製で白色顔料が塗布されており、シタンを用いた新補部分、及び本品とは異なるが、形状はほぽ同じで、半古がよく墨斗の形状を考察した上で復元に取り組んだ様が偲(しの)ばれる。なお、本品では原宝物にはない糸の先端に着けられた軽子(かるこ)が、象牙製の瓢簞(ひょうたん)形となっており、細工物(さいくもの)なども手掛けた半古らしさが表出している。初音葦手象嵌裁縫箱(はつねあしでぞうがんさいほうばこ)に納められた墨斗は表面の文様が異なるものの本品と同工であり、制作に当たって正倉院宝物が参考とされたことが理解される。
(清水健)
名匠三代木内喜八・半古・省古の木工芸. 奈良国立博物館, 2015.6, pp.41-42, no.5-2.
はつねあしでぞうがんさいほうばこ しさく(きうちけさんだいしりょうのうち) 初音葦手象嵌裁縫箱 試作(木内家三代資料のうち)
1合
木製 キリ材
長33.3 幅24.2 高10.8
工芸
大正時代~昭和 20世紀
大正13~昭和3年 1924~1928年
- H029481
- H029480
- 2015/02/24
- 斜全体
- H029481
- 2015/02/24
- 斜全体(身見込、懸子、蓋表を並べた状態)
- H029482
- 2015/02/18
- 蓋表(真上から見た状態)
- H029483
- 2015/02/18
- 身見込(身に握鋏、裁鋏、折尺の木製雛形を入れた状態)
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| 収蔵品番号 | 1471-0 |
|---|---|
| 部 門 | 工芸 |
| 区 分 | 工芸 |
| 部門番号 | 工348 |
| 寄 贈 | 岡井一子氏寄贈 |
| 銘 文 | 箱蓋表墨書「御物模造/墨斗」 箱蓋裏墨書「現品明治三十七年/正倉院御物整理中塵芥中此破片を/発見補修せる物也/昭和庚午晩秋/峕年七十六/半古」 |
| 文 献 | 名匠三代木内喜八・半古・省古の木工芸. 奈良国立博物館, 2015.6, 64p. |

