土地や税を司る朝廷の役所、民部省(みんぶしょう)が命令を下した文書。本品は現存最古の民部省符(みんぶしょうふ)の原本である。符とは律令(りつりょう)で定められた公文書の形式のひとつで、下達文書として用いられた。文書の内容は、政府に没収された田地をもとの所有者である弘福寺(ぐふくじ)(川原寺(かわはらでら))に返すよう、大和国(やまとのくに)の長官に命じるものである。文面には田地が返還に至るまでの経緯が事細かに記され、律令制下においてどのように土地の権利が認定されたのかを物語る。本文の上には「天皇御璽」の印文を持つ朱印が十一顆(か)捺(お)されており、当時の御璽(ぎょじ)(天皇の印章)の印面を伝える点でも貴重。
(佐藤稜介)
奈良博三昧―至高の仏教美術コレクション―. 奈良国立博物館. 2021.7, p.248, no.38.
楮紙一枚を用いて書かれた古文書を、掛幅装に仕立てたものである。古文書は、延長4年(926)2月13日付で、律令政府の中心たる太政官の下にある民部省符から、大和国に宛てて出された符(上意下達文書)である。その内容は、弘福寺(大和国高市郡所在)が不当に収公された寺田を返還するよう大和国を通じて政府に求めてきたのに対し、それを認可するものとなっている。本文は一筆であるが、末尾の官人の名のみ自署。また、字面には「天皇御璽」の印文を持つ朱印が11顆捺されている(印影は縦8.8cm、横8.6cm)。なお、本文書は影写本が東京大学史料編纂所に架蔵され(「東寺文書」幅之部)、釈文は『平安遺文』223号に所収される。

