蓋・身ともに面取(めんと)りを施した被蓋造(かぶせぶたづくり)の箱である。木型に皮革(ひかく)を張り、乾燥ののち型を抜き取って布着(ぬのき)せしたうえ、漆で塗り固める漆皮(しっぴ)の技法で成形されている。蓋・身には、鳳凰(ほうおう)やこれを巡って旋回的に配された双鳥、花枝や花文といった、金銀のきらびやかな装飾が施されている。原宝物は、その華やかな装飾から、東大寺の法会(ほうえ)で仏への供物を収めるために使用された献物箱(けんもつばこ)とみられている。
本品は、文様表現が金銀の平脱(へいだつ)(文様形に切り抜いた金・銀の薄板を貼って漆を塗布したのち、文様部分の漆を剝ぎ起こす)ではなく研ぎ出しであること、金色の文様部分に金板ではなく鍍金(ときん)した銀板を用いることなど、原宝物と若干相違する部分もあるが、おおよそにおいて忠実な模造が行われている。作者は不明ながら、原宝物に接し得た名のある工人の手になる可能性も考えられよう。
なお、本品を収める木箱の蓋表には、「寧楽 大閑堂監製」の墨書があり、戦前の古美術商である大閑堂(たいかんどう)の監修で模造が行われたことがわかる。
(三本周作)
よみがえる正倉院宝物. 奈良国立博物館, 2020.4, p.57, no.27.
面取(めんとり)のある被蓋造(かぶせぶたづくり)の漆皮箱(しっぴばこ)で、蓋表と側面及び身の側面に花喰(はなく)い鳥や唐花文(からはなもん)を平脱(へいだつ)技法によって表している。正倉院中倉(ちゅうそう)伝来の原宝物は、大仏(だいぶつ)開眼会(かいげんえ)など東大寺の法会(ほうえ)に用いられた献物箱(けんもつばこ)と考えられる。
題箋

