中国・唐時代に流行した仙盞形(せんざんがた)水瓶(すいびょう)を範に、平安時代に製作された水瓶。唐代のものに比べ肩が張り、そのぶん胴の膨(ふく)らみが小さく、また高台(こうだい)が低いなど、和様化が見られる。もとは蓋(ふた)がついていた。
題箋
水瓶(すいびょう)は浄水を入れて仏前に献じたほか、僧侶の飲用にも用いられた。また、菩薩の持物に用いることも多く行われた。この作品は銅製轆轤仕上(どうせいろくろしあげ)の水瓶。胴部は肩が張り、ここに別製の蓋付きの注口を付けている。注口をもつ水瓶では、胴部と頸部の境に段差や突帯を巡らすなど境目をはっきりと表現する例が多いが、本品では胴部と頸部との間の境目を明瞭には表現せず、なだらかに連続させている点に特徴がある。口部は朝顔状に広がり、頸部はくびれが強くない。高台(こうだい)はきわめて低い。この形式は中国・唐代に流行した仙盞形(せんざんがた)水瓶を模していると推測されるが、全体に表現が穏やかで和様化がうかがえる。製作の時期は平安時代と推測される。
(内藤栄)
平成十二年度国立博物館・美術館巡回展 信仰と美術, 2000, p.61

