アーチ形の屋根を持つ龕(がん)の中に、蓮華座(れんげざ)に結跏趺坐(けっかふざ)する如来(にょらい)像を置く。左右脇には二頭の獅子(しし)を配し、仏龕(ぶつがん)に覆(おお)い被(かぶ)さるように樹木が伸びる。唐時代の塼仏(せんぶつ)の先駆となる貴重な遺品である。
音声ガイド
塼仏(せんぶつ)とは、粘土板に仏の姿を半肉彫(はんにくぼり)(レリーフ)で表したもの。型押し(もしくは型抜き)で同じ意匠を量産するのが一般的で、素焼きの後に彩色や金箔(きんぱく)で装飾したものもある。大型のものは厨子(ずし)に納めて礼拝仏(らいはいぶつ)としたものがあり、また中・小型のものは堂塔の内壁に貼り並べて千仏洞(せんぶつどう)的な空間を作り出したとも言われる(釘孔(くぎあな)を穿(うが)つものがある)。
本品は自立するほど厚く作られた塼仏で、アーチ形の屋根をもったくぼみの中に釈迦如来(しゃかにょらい)坐像を安置する。如来像は薄衣を偏袒右肩(へんたんうけん)(右肩を衣から露出させる)にまとい、手は腹前で定印を結び、右足を前に足を組む。くぼみの左右脇には獅子(しし)が座り、樹木がのびて枝葉が屋根を覆う。中国の北斉から隋時代の遺品とみられるが、仏像の姿には唐時代に発展した椅子に座る如来像にも通ずる要素がうかがえ、日本に伝えられた塼仏の祖型的存在とも受け取れる。
(吉澤悟)
奈良博三昧―至高の仏教美術コレクション―. 奈良国立博物館. 2021.7, p.244, no.11.
長方形の塼面にアーチ形の屋根をもつ仏龕を設け、その中に独尊の如来坐像を安置した厚手の塼仏である。如来像は偏袒右肩に薄衣を纏い、宝印を結び、蓮華座の上に右足を前に結跏趺坐する。仏龕の屋根は、宝珠を飾った二本の柱で支え、左右の脇には二頭の獅子を置き、仏龕の両側にも二本の樹木を配するが、その枝は屋蓋に沿って登り、塼面の左右から上部を覆っている。像容から中国の北斉から隋時代の遺品とみられるが、次の唐代の如来倚像塼仏に通ずる要素があり、また日本の如来倚像塼仏の系譜をたどる上にも重要である。
(井口喜晴)
東アジアの仏たち, 1996, p.255

