輪状部の上には三基の五輪塔(ごりんとう)が並び、中央には宝塔(ほうとう)と一対の華瓶(けびょう)が表されている。破綻(はたん)なくまとめられた肉厚で充実感のある造形や繊細な蓮華の彫刻に金工技術の冴(さえ)を見せる錫杖頭の名品である。
題箋
柄(穂袋)に輪を付した錫杖頭。輪は左右とも上下二ケ所でくびれ、下のくびれの外側に三日月形、上のくびれの外側には雲上の五輪塔を表す。輪の頂に五輪塔を据える。輪の先端は柄の上方で蓮弁帯とともに六角二条の紐でくくられ、蕨手状に巻いた端には宝瓶をのせ、柄の頂上に宝塔を据えている。柄は中ほどに蓮弁帯、基部に蓮華座を作っている。輪の左右に垂らす遊環を失っているが、全体の形はよく整っている。輪の外形がやや縦長で、五輪塔の屋根に反りが見られることなどから鎌倉時代後半の制作と考えられる。
(内藤栄)
奈良国立博物館の名宝―一世紀の軌跡―,奈良国立博物館.1997.4,p.288.

