四段積上げ式の銅製経筒で、蓋、筒身、台座の三部で構成される。蓋は塔の屋根を思わせる傘蓋で、頂部を伏鉢状に大きく盛上げ、相輪を取り付ける。筒身は円筒を四段に高く積み上げたものであるが、個々の円筒は別作りされたものではなく、元は一本の円筒を鋸で四つに切り分けたものである。筒身の表面には合掌姿の普賢菩薩と、それをとりまくかたちで薬王・勇施の二菩薩、持国・多聞の二天、そして唐装の十羅刹女像が全面にわたって流麗な筆致で線刻されている。法華経陀羅尼品によれば、二菩薩、二天、十羅刹女は、法華経の護持者を守護することを本誓とした者であり、これを描くことは経筒への最高の荘厳に他ならない。図像の脇には「保延七年〈歳次辛酉〉二月十五日 勧進〈延暦寺 族姓大神 僧定尋 長 壽 丸〉」の銘があり、延暦寺の定尋という勧進僧の活躍により、保延七年(一一四一)に埋納されたことが知られる。台座は段をもって裾を広げ、裾端は切れ込みを入れて七弁の花形に飾っている。この台座の裏面には墨書があり「陳□」と読める。「陳」の字が右上に寄って書かれているため、他にも文字が存在するはずであるが、緑青の被覆によって読むことが出来ない。「陳」の墨書銘は銅製経筒(九州国立博物館蔵)の他、伝四王子山出土の陶製経筒(九州国立博物館蔵)にも見ることができ、経塚造営に手広く関与していた集団と推測される。なお、本品に描かれた普賢十羅刹女像は、兵庫県鶴林寺の太子堂(天永三年〔一一一二〕頃の建立)の壁画に次いで我が国では二番目に古い図像である。紀年銘を伴う図像としては最古となる。十羅刹女の図像が将来された経緯を考える場合、陳に表象される宋人の関与や天台宗僧侶の勧進活動など、本品に備わる情報に非常に示唆的であると言えよう。
(吉澤悟)
聖地寧波 日本仏教1300年の源流~すべてはここからやって来た~, 2009, p.279-280
重要文化財 きょうづつ(でんふくおかけんしゅつど) 経筒(伝福岡県出土)
1口
銅製 鋳造 輪積式 相輪鈕 傘蓋
総高41.3 口径8.9
考古
平安時代 12世紀
保延7 1141

- D000901

- D009279
- 1995/06/20
- 輪を横に置く

- D000902
- 1991/01/07
- 側面(筒のみ)

- D000903
- 1991/01/07
- 側面(筒のみ)(銘文有)

- D000901
- 側面

- A024608
- 1995/06/20
- 輪を横に置く

- A022387
- 1991/01/25
- 側面普賢十羅刹女部分

- A022358
- 1991/01/07
- 側面(基台・蓋なし)

- A022359
- 1991/01/07
- 側面(基台・蓋なし)

- A022360
- 1991/01/07
- 側面(基台・蓋なし)

- A022361
- 1991/01/07
- 側面(基台・蓋なし)

- A022362
- 1991/01/07
- 側面(基台・蓋なし)

- A022363
- 1991/01/07
- 側面(基台・蓋なし)

- A022364
- 1991/01/07
- 側面(基台・蓋なし)

- A022365
- 1991/01/07
- 側面(基台・蓋なし)

- A022366
- 1991/01/07
- 側面(基台・蓋なし)

- A022367
- 1991/01/07
- 側面(基台・蓋なし)

- A022368
- 1991/01/07
- 側面(基台・蓋なし)

- A022369
- 1991/01/07
- 側面(基台・蓋なし)

- A022389
- 1988/12/21
- 側面普賢十羅刹女部分

- A022352
- 側面

- A022353
- 側面

- A022354
- 側面

- A022355
- 側面

- A022356
- 側面

- A022357
- 側面(基台なし)

- A022370
- 側面(基台・蓋なし)

- A022371
- 側面(基台・蓋なし)

- A022372
- 側面(基台・蓋なし)

- A022373
- 側面(基台・蓋なし)

- A022374
- 側面(基台・蓋なし)

- A022375
- 側面(基台・蓋なし)

- A022376
- 側面(基台・蓋なし)

- A022377
- 側面(基台・蓋なし)

- A022378
- 側面(基台・蓋なし)

- A022379
- 側面(基台・蓋なし)

- A022380
- 側面(基台・蓋なし)

- A022381
- 側面(基台・蓋なし)

- A022382
- 側面(基台・蓋なし)

- A022383
- 側面(基台・蓋なし)

- A022384
- 側面(基台・蓋なし)

- A022385
- 側面(基台・蓋なし)

- A022386
- 側面羅刹女線刻部分
もっと見る
収蔵品番号 | 1020-1 |
---|---|
部 門 | 考古 |
区 分 | 考古 |
部門番号 | 考276 |
伝 来 | 伝福岡県出土 |
銘 文 | 筒身線刻「保延七 年【歳 次/辛 酉】二月 十五日 勸進 【延暦寺/僧定尋/□】 【族姓大神/長壽丸】」 |
指定名称 | 銅経筒 保延七年二月十五日在銘・普賢十羅刹女像毛彫 一口、滑石製外筒 法華種子曼荼羅・真言等陰刻 伝福岡県出土 一基 |
指定番号 | 考386 |
指定年月日 | 昭和56年6月9日 |
文 献 | 聖地寧波(ニンポー):日本仏教1300年の源流:すべてはここからやって来た. 奈良国立博物館, 2009, 352p.奈良国立博物館蔵品図版目録 考古篇 経塚遺物. 奈良国立博物館, 1991, 120p.菩薩. 奈良国立博物館, 1987, 226,xivp.ブッダ釈尊:その生涯と造形. 奈良国立博物館, 1984, 408p. |
関連する文化財
収蔵品番号 | 画像 | 名称 |
---|---|---|
1020-0 |
![]() |
経筒・外筒(伝福岡県出土) |
1020-2 |
![]() |
外筒(伝福岡県出土) |
収蔵品番号 | 1020-0 |
---|---|
画 像 |
![]() |
名 称 | 経筒・外筒(伝福岡県出土) |
収蔵品番号 | 1020-2 |
---|---|
画 像 |
![]() |
名 称 | 外筒(伝福岡県出土) |