入峰斧は修験道(しゅげんどう)において山伏(やまぶし)が山林を進む際に道を切り開くのに用いたが、後に形式化して入峰前の儀式に用いられるようになった。この品は中央部を細くした撥(ばち)形の刃を柄に挿し通したもの。刃の中央にハート形の透かしを作り、銅製の覆輪(ふくりん)(縁飾りの金具)をはめている。後ろ側は三弁形とし、同様にハート形の透かしを表している。柄は木製で銅板を螺旋状に巻いている。装飾性と実用性を兼ね備えた品であり、比較的初期の作例と考えることができる。神照寺(滋賀)伝来とされる。
(内藤栄)
奈良博三昧―至高の仏教美術コレクション―. 奈良国立博物館. 2021.7, p.265, no.144.
入峰斧は山伏が山林に入る時に、行路を切り開くのに用いる実用品であったが、後に形式化し儀式用具としても用いられた。この品は、中央部を細くした撥形の刃を柄に挿し通したものである。刃面は中央にハート形の透かしを開けて銅製の覆輪を嵌め、後ろ側の峰は三弁形に作り、面に同様の透かしを開けている。柄には銅板が螺旋状に巻き付けられている。修験道の行者である山伏は、各地の霊山など険しい山岳に入って修行するため、山野を跋渉するのにふさわしい各種の道具を携行していた。この斧は装飾を抑え、実用に徹した力強さが感じられる品である。滋賀・神照寺伝来とされる。
(内藤栄)

