如意は僧侶が儀式などで手にとり、威儀(いぎ)を正すのに用いる法具。本来孫の手に似た形状で、正倉院に伝わる八世紀の作例はその形式である。中国では唐代後期(九世紀)より掌部が幅広の如意が用いられるようになり、わが国でも平安時代以降の作例はその形式が多い。本品は木製黒漆塗の柄に、銅板製で鍍金(ときん)を施した瓜部を鋲留めしている。瓜は両側に渦巻形を表しており、飛雲文様をかたどっているかと思われる幅広の形状である。瓜は二羽の鳳凰(ほうおう)がくわえた宝相華が全面に広がり、さらに山、飛鳥、蝶を線刻している。瓜の形、文様より平安時代後期の作と推定される。
(内藤栄)
奈良博三昧―至高の仏教美術コレクション―. 奈良国立博物館. 2021.7, p.265, no.141.
如意は説法、講讃、法会などで講師が手にして威儀をただすのに用いる儀式用具。本品は銅板製鍛造で、金銀の鍍金をほどこした如意。雲形の頭部は左右に広く、中央に稜先をつくり、その左右に大小の円弧を表して弧端を渦巻き状に刳り込んでいる。雲脚は裏面に彎曲して細くなり、出八双猪目透かしの金具を装して木製黒漆塗りの柄に鋲留めしている。文様は雲頭のまわりに羽状文を並列し、中央に宝相華を咋えた鳳凰を対向させ、宝相華文はほぼ左右対称に拡がって雲頭全体を飾り、花間には3羽の小鳥と1羽の蝶が飛び交い、双鳳文の下には花葉を化生する山岳文を加える。雲脚にも宝相華文と双鳳文を表し、出八双金具は宝相華と鴛鴦を配する。文様はすべて繊細な毛彫りで、文様には鍍金、間地には鍍銀をほどこし金銀相映じて効果を見せている。
(内藤栄)
奈良国立博物館の名宝─一世紀の軌跡. 奈良国立博物館, 1997, pp.288-289, no.52.

