牛皮製の団扇形華鬘。蓮唐草(はすからくさ)文を地文として二羽の鳳凰(ほうおう)と総角(あげまき)を切り透かし、黒漆(くろうるし)を塗った上に彩色(さいしき)を施している。縁には金銅(こんどう)製の覆輪(ふくりん)をつけ、上部に吊金具(つりかなぐ)をつける。東大寺法華堂(三月堂)伝来といわれる。
題箋
団扇形の牛皮華鬘で、伝来は明らかではないが牛皮華鬘としては稀にみる保存良好な作品である。縁には金銅覆輪をめぐらし、金銅板二枚重ねの蓮華形座を装着し、切子頭(きりこがしら)の鐶台を取り付けている。当初は垂飾(すいしょく)があったが現在はほとんどが欠失。文様は切り透かしで中央に総角(あげまき)(結び紐)を表し、左右に蓮華に立つ鳳凰を表し、間地はすべて蓮唐草文としている。表裏とも白土地とし、表にのみ彩色を施している。作風にはやや形骸化が目につき、総角は本来の姿が曖昧に表現され、蓮唐草文も伸びやかさに欠ける。華鬘に鳳凰を飾る例は神奈川・鶴岡八幡宮の木製華鬘があり鎌倉時代に好まれたことが窺えるが、すでに正倉院宝物中に対向する二羽の鳳凰を透彫りした金銅製葛形裁文と称する団扇形華鬘風の作品があり、その伝統を踏むものと考えることもできよう。
(内藤栄)
奈良国立博物館の名宝―一世紀の軌跡―,奈良国立博物館.1997.4,p.286.

