『瑜伽瑜祇経(ゆがゆぎきょう)』に依拠する三目一面六臂(さんもくいちめんろっぴ)の愛染明王像である。頭上に獅子冠(ししかん)をあらわし、各手に弓矢や五鈷鈴(ごこれい)などを持ち、日輪をあらわす光背(こうはい)を背に、宝瓶の上にある蓮華座上に趺坐(ふざ)する。ただし本像では、獅子冠上の五鈷鉤(ごここう)や冠繒(かんぞう)、各手の持物、光背等を亡失している。頭・体幹部を一材から彫出する割矧造(わりはぎづくり)で、三目とも玉眼(ぎょくがん)である。表面の彩色(さいしき)は大部分が後補であるが、左膝部の裙(くん)にみられる団花文(だんかもん)は制作当初のものと思われる。
(岩井共二)
なら仏像館名品図録. 奈良国立博物館, 2022, p.128, no.171.
愛染明王は衆生(しゅじょう)の煩悩(ぼんのう)を昇華(しょうか)させ、浄菩提心(じょうぼだいしん)へと導く尊像。全身真紅の姿で、獅子冠(ししかん)を戴(いただ)き、忿怒(ふんぬ)の相を示し、宝瓶座(ほうびょうざ)に坐す。六本の腕があり、かつては様々な武器や法具・蓮華等を手にしていた。
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