橘寺は、聖徳太子(しょうとくたいし)建立の七寺の一つ「橘尼寺」との伝承を持つ。創建は詳らかではないが、天武(てんむ)天皇九年(六六〇)に橘寺の尼室(あまむろ)が失火して十房を焼いたとの記録があり(『日本書紀』)、この頃までには伽藍が整っていたとみられる。伽藍配置は正面を東に向け、西から講堂、金堂、塔、東門が一直線に並ぶ四天王寺(してんのうじ)式といわれるが、講堂が回廊の外に位置する山田寺(やまだでら)式の可能性も指摘されている。橘寺からは大量の塼仏が出土しており、全体の形が上端を尖らせる火頭(かとう)形のものと方形のものの二種類があり、周縁を突出させる古手の特徴をもつものが多い。ここに示した二点は火頭形と方形の両者であるが、方形の方は上部を欠失している。火頭形は、自立こそしないがかなり厚手であり、火炎で強い熱を受けたためか周縁に変形がみられる。塼面の図像は川原寺(かわはらでら)裏山遺跡の三尊塼仏とほぼ同じで、中尊は宣字座(せんじざ)に倚座(いざ)して定印(じょういん)を結び、頭に二重円光を負い蓮華座に足をのせている。背景には樹木の代わりに火焔が描かれており、天蓋脇の飛天(ひてん)も略して火焔で埋めている。また、背障(はいしょう)(背もたれ)を中尊の身光として表現するのも独特である。この火頭形の原形を、中国・西安の大雁塔から見つかる「大唐善業」銘塼仏に求める見解もあり興味深い。一方、方形の方は火頭形に比べて薄手で、中尊の後ろに背障の表現があるので、川原寺裏山遺跡の塼仏と同じ范型を使用しているとみられる。
(吉澤悟)
開館一二〇年記念白鳳―花ひらく仏教美術―, 2015, p.266
ほうけいさんぞんせんぶつ(でんならけんたちばなでらしゅつど) 方形三尊塼仏(伝奈良県橘寺出土)
1個
塼製 土製 型押 焼成 素焼 方形
縦15.5 横19.0
考古
飛鳥時代 7世紀
- H040340
- H040340
- 2017/09/05
- 残片全体
- D009754
- 1996/03/18
- 残片全体
- A024751
- 1996/03/18
- 残片全体
- A024031
- 残片全体
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| 収蔵品番号 | 822-0 |
|---|---|
| 部 門 | 考古 |
| 区 分 | 考古 |
| 部門番号 | 考238 |
| 伝 来 | 伝奈良県高市郡明日香村橘出土 |
| 文 献 | 白鳳 : 花ひらく仏教美術 : 開館120年記念特別展. 奈良国立博物館, 2015, 298p.奈良国立博物館蔵品図版目録 考古篇 仏教考古. 奈良国立博物館, 1993, 156p. |

