山村廃寺は奈良盆地東辺の丘陵上に所在し、字名からドドコロ廃寺とも称される。早くから古瓦が出土していたが、大正十五年(一九二六)には部分的な発掘調査が行われ、瓦積基壇(かわらづみきだん)を持つ塔跡から石製相輪(そうりん)や風鐸(ふうたく)などが発見された。本品は、山村廃寺出土とされる軒瓦で、軒丸瓦は単弁の花弁に子葉を重ねた山田寺系の蓮華文を表す。ただし、外縁は凸線による鋸歯文(きょしもん)を巡らせており、山田寺式よりは後出であろう。
(中川あや)
奈良博三昧―至高の仏教美術コレクション―. 奈良国立博物館. 2021.7, p.247, no.28.
山村廃寺出土の軒丸瓦は、山田寺(やまだでら)系の単弁蓮花文を飾る。山村廃寺は奈良市の東山の谷間にあり、石製の相輪を出土したことで知られている。
(井口喜晴)
奈良国立博物館の名宝─一世紀の軌跡. 奈良国立博物館, 1997, p.280, no.13-6.