両面に孔雀文様を表した磬。横へゆったりと広がる形状は平安時代後期にみられる特徴である。撞座(つきざ)にあたる蓮華の蓮肉(れんにく)部分は花形につくることが多いが本品は円形で表される。
題箋
銅鋳造、両面式の山形磬で、上縁は左右に三弧連らね、下縁は五弧連らねる。縁は子持ちの菱形断面をもち、胎は縁厚に比して薄手である。胎中央に大きく複弁四葉間弁付の蓮華文を鋳あらわして撞座とし、その左右の間地には孔雀文を飾っている。いずれも和鏡の鏡背文様を想わせるおだやかで格調の高いものでこれもへら押しに依るものと考えられる。上縁の左右中弧の頂には小振りの丸形釣鐶を共鋳する。端正な作りをもつ平安後期の孔雀文磬の一典型をなす品である。
(阪田宗彦)
密教工芸 神秘のかたち, 1992, p.196

