四天王と三鈷杵(さんこしょ)を交互に配した鈴身(れいしん)部や、竜口(りゅうこう)から出た逆刺(さかし)のある鈷(こ)部は、中国・唐代の五鈷鈴を祖型とする。鈴・杵(しょ)を別鋳とし、把(つか)部中央に吽形(うんぎょう)の四鬼面(きめん)をつける点から、鎌倉時代の製作と考えられる。
題箋
鈴・杵を別鋳して差し込み式に組み合わせた大形の五鈷鈴で、全面に鍍金が残る。鈴身は口縁を八花形に刳り、側面に四天王像と三鈷杵文を交互にあらわし、下方に雲形を反復させた圏帯を飾り、肩部に子葉を含んだ複雑な蓮弁装飾を施している。四天王は甲冑を着け、天衣をまとう姿で、邪気を踏まえる。頭部には火焔光があらわされ、多聞天が左手に塔を棒持し、右手に鉾を執るほかは、いずれも剣を持つ。三鈷杵文はそれぞれ蓮台に置かれ、上方に火焔を付した光背をつける。杷は中央四方に吽形(うんぎょう)の鬼面を配し、上方に蓮弁帯をめぐらす。鈷は中鈷に二本の樋を彫り、脇鈷は竜口より吹き出し、逆刺しを持った忿怒形に作られている。鈴身口辺の雲形文帯、蓮台上の三鈷杵文、肩部の蓮弁など、金剛峰寺の独鈷鈴に共通する部分が多いが、本鈴には唐時代の作例に通有の装飾的で細部の仕上げにこだわらない大らかな表現がなく、全体に整然とした趣が強く主張されており、杷を飾る蓮弁帯などの意匠や手法などからしても、和製とするのが妥当であろう。数少ない和製仏像鈴として注目すべき遺品といえる。
仏像をあらわした金剛鈴, 1988, p.16

