両端に三本の鋒(きっさき)をあらわした金剛杵(こんごうしょ)。実際に密教僧が用いる法具(ほうぐ)として平安時代に作られたもので、護摩(ごま)や念誦(ねんじゅ)の際に三鈷杵を左手に持つことで諸事が成就(じょうじゅ)すると経典に説かれる。古代インドの彫像の持物にこのかたちの祖形が見られ、千手観音(せんじゅかんのん)や密教尊像の持物としてあらわされる。
(永井洋之)
みほとけのかたち 仏像に会う. 奈良国立博物館, 2013.7, p.59, no.33.
鋳造の際の鬆(す)が多いため金肌のやつれが目立つ作品であるが、鬼目に俵形の刻みをつけ、素弁の蓮弁帯は内側を短く外側を大きくつくり、鈷部は脇鈷の張りが上部で屈曲するなど、その形式は古様である。日光・男体山出土の三鈷杵や京都・曼殊院の三鈷杵など、通形の三鈷杵中で古い一群に属する作品に近い。平安後期もあまり下らないであろう。
(内藤栄)
奈良国立博物館の名宝─一世紀の軌跡. 奈良国立博物館, 1997, p.289, no.55.

