宝庫には伎楽面が一七一面のほか、数多くの伎楽装束が伝えられている。伎楽は複数の演目があり、面は十四種二十三面が用いられたとされる。宝庫の伎楽面は点数、銘文や様式等より複数のセットが混在していることが明らかであり、装東についても同様のことがいえる。
本品は、正倉院宝物の染織品の模造を長年手がけている龍村美術織物(たつむらびじゅつおりもの)が製作した伎楽呉公の面と装東のセットである。宝庫には呉公の銘をもつ伎楽装束に、袴・裳(も)残欠(ざんけつ)・前垂(まえたれ)・襪(しとうず)・笛袋が伝わっている。これらは天平勝宝四年(七五二)四月九日の大仏開眼会において用いられたものである。また、呉公の面は六点伝わっている。宝亀十一年(七八〇)に作成された『西大寺資財流記帳(さいだいじしざいるきちょう)』によれば、呉公の装束は頂隠(ちょういん)・袍(ほう)・衫(さん)・袴・笛袋・袜(襪)・幞子(はちまき)から構成されていたという。模造は原宝物にない衣装は他の装束を参照してつくられている。なお、奈良国立博物館には昭和三十七年(一九六二)に納品された。
(内藤栄)
よみがえる正倉院宝物. 奈良国立博物館, 2020.4, p.44, no.18.
伎楽に用いる呉公の仮面の模造。原品は正倉院に伝わる乾漆製(かんしつせい)の面で、本品は別保存される金銅製(こんどうせい)透彫(すかしぼり)の頭飾を付けた姿に表される。原品は肌を青色とするが、本品は薄橙色(うすだいだいいろ)としている。(この解説は、一括資料のうち「伎楽面」に関するものである)
題箋

