中央に立つ松の大樹の枝からは藤の花房(はなぶさ)が垂れ、松の幹に絡(から)みつく藤の蔓(つる)によって「南無春日明神」の六文字を象っている。松の陰で後方を振り返る白鹿は、春日神の使いとされる神鹿を表しているのだろう。春日大明神号を表す春日曼荼羅は、他に鎌倉時代に遡(さかのぼ)る当館蔵本、室町時代の米国・イェール大学美術館本が知られるのみで、墨画による絵文字形式の名号曼荼羅は本品が現存唯一である。
箱蓋裏墨書には、室町時代末期から安土桃山時代にかけて奈良を中心に活躍した画家・山田道安(やまだどうあん)の筆とするが、淡墨の速筆を基調とする画風は、むしろ同時期に春日若宮神社付近の櫟屋堂(いちいやどう)に工房を構えた絵師が描く作例に通じるものがある。春日信仰に関わる特殊な画像であることからも、櫟屋の作例である可能性を検討すべきだろう。
(谷口耕生)
おん祭と春日信仰の美術ー特集 神鹿の造形ー. 奈良国立博物館, 2020, p.66, no.40.
- H041667
- H041667
- 2018/02/26
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| 収蔵品番号 | 1532-0 |
|---|---|
| 部 門 | 絵画 |
| 区 分 | 絵画 |
| 部門番号 | 絵292 |
| 銘 文 | 内箱蓋裏貼紙墨書「春日明神藤鹿」、内箱蓋裏墨書「春日大明神 山田道安書画 表具泰渓」、旧裱背墨書「藤春日鹿之画 山田道安筆 [ ] 再表具泰溪叟」 |

