滋賀県長浜市に所在する古代寺院跡・八島廃寺から出土したと伝わる鬼瓦。画面一杯に単弁八弁蓮華文(たんべんはちべんれんげもん)を表し、四隅に人面を配置する。大きな蓮華文を一つ配する鬼瓦のデザインは飛鳥時代に流行するが、本品は人面を伴う点で極めて特殊である。人面を表した瓦は朝鮮半島にいくらか例があり、本品は彼地の影響を受けたものである可能性がある。裏面は、下辺以外の三辺の縁を突出させるという、一般的な鬼瓦にはみられない構造を採る。これは、渡来系氏族との関係が想定される滋賀県穴太廃寺(あのうはいじ)や同南滋賀廃寺(みなみしがはいじ)の方形蓮華文軒丸瓦と共通し、文様と合わせて朝鮮半島色の強い瓦であると言える。
(中川あや)
奈良博三昧―至高の仏教美術コレクション―. 奈良国立博物館. 2021.7, pp.245-246, no.19.
滋賀県長浜市に位置する白鳳期の寺院遺跡、八島廃寺から出土したと伝わる。本品は東アジアの瓦を広く収集していたことで知られる井内家の旧蔵品として古くから知られていたものであり、これまでにも当館『飛鳥白鳳の古瓦』などでも紹介されている。近年の寺域の発掘調査で破片ながら同笵資料が出土し、本品が八島廃寺所用であることが確実となった。
飛鳥時代、百済直結のデザイン及び製作技法で作られた複数蓮華文鬼瓦が法隆寺で採用されて以降は、日本的アレンジが加わって中央に蓮華文をひとつ置くいわゆる単数蓮華文鬼瓦のスタイルが確立する。奈良では奥山久米寺(おくやまくめでら)所用品が古く、山村廃寺(やまむらはいじ)ついで山田寺など白鳳期の寺院で多く採用された。本品は基本的にこの様式に属し、さらに蓮華文の周りに人面を配置する。人面を瓦に文様として採用するものは日本では例がなく朝鮮半島からの影響が推察される。裏面の外縁を堤状に作り出し、コの字形を覆いとする構造は、渡来系氏族との関係が想定される穴太廃寺(あのうはいじ)や南滋賀廃寺(みなみしがはいじ)の方形蓮華文軒丸瓦と共通し、渡来系氏族の影響下で製作されたとする説を補強している。
(岩戸晶子)
開館一二〇年記念白鳳―花ひらく仏教美術―, 2015, p.228

