春日若宮社神主家の中臣祐賢(なかおみのすけたか)(?~一二八二)が詠んだ和歌三首を自ら書き記した懐紙である。和歌は「霞」「鶯」「春恋」と題する三首。祐賢は、もともと祐方(すけかた)と名乗り、寛元四年(一二四六)二月頃に祐定(すけさだ)の譲りを受けて神主となった。「兵庫助(ひょうごのすけ)祐賢」を自称する本品は、この間の作である。本品も他の春日懐紙と同様に、紙背(しはい)を利用されて現在まで伝わったと思われるが、背面は剝(は)ぎ取られてしまって墨痕はほとんど確認できない。また、春日懐紙の大半の紙背には「春日本万葉集」が書かれるが、本品は中臣祐定が『万葉集』の筆写を終えた寛元二年(一二四四)より後の和歌懐紙であり、紙背には『万葉集』ではない別の典籍が書かれていたと推定される。現在までのところ、紙背が「春日本万葉集」でない春日懐紙は、数枚しか知られておらず、大変貴重なものと言える。
(野尻忠)
おん祭と春日信仰の美術, 奈良国立博物館,2012, p.53,no.23

- H050003

- H050002
- 2019/09/19
- 全文(表具含む)

- H050003
- 2019/09/19
- 全文

- D055963
- 2009/07/16
- 全体

- A031242
- 2009/07/16
- 全体
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収蔵品番号 | 1431-0 |
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部 門 | 書跡 |
区 分 | 書跡 |
部門番号 | 書150 |
銘 文 | 箱蓋表墨書「祐賢三首和歌」 |
文 献 | おん祭と春日信仰の美術 : 特別陳列. 奈良国立博物館, 2012, 76, ivp. |