春秋末期から戦国期にかけて発達した壼類の一種にあたる扁壼(へんこ)は、扁平な楕円形の器身を持つ。北方騎馬民族の水筒から形を写した可能性があると考えられ、それまでの青銅器の伝統的な器形とは趣を異にするものである。漢代に入ると無文化して器身も低くなり、退化するが、その中でもやや奇彩を放つ本例は、器表に刻文で山や獣が所狭しと表わされており、この時期の絵画資料として非常に貴重な作品である。
(難波純子)
坂本コレクション 中国古代青銅器. 奈良国立博物館, 2002, p.56, no.239.
戦国期から漢代にかけて流行した扁壺は次第に退化してゆくが、その中でもやや奇彩を放つこの扁壺は、鋳造後に施された刻文により山岳(さんがく)や獣文(じゅうもん)が所狭しと表わされている。これも神仙思想に登場する山の神々を表わしたものかもしれない。圏足(けんそく)に「更始元年」(A.D.二三年)の銘文が彫りこまれているが、これが真とすれば、その年代のわかる貴重な資料といえる。
題箋

