銅造鋳銅製の浮彫で、押出仏を制作するための仏像型と見られる。同じ印相と持物をとる観音菩薩が、唐招提寺所蔵の押出仏中に見いだされるが、肉身や衣の柔らかい質感表現が奈良時代の様式を示す。
音声ガイド
鋳銅製の浮彫で、押出仏(おしだしぶつ)を制作するための仏像型(ぶつぞうがた)とみられる。頭に大きく化仏(けぶつ)をあらわし、左手は垂下して水瓶(すいびょう)をとり、右手は胸前に上げた、正面向きに立つ独尊の観音像である。同じ印相(いんぞう)と持物をとる観音菩薩像が、東京国立博物館所蔵の押出仏(法隆寺献納宝物二〇三号)や唐招提寺所蔵の押出仏中に見出されるが、本品とは若干図様が異なり、本品から打ち出された押出仏は確認されていない。丸みを帯びた顔立ちと、胸から腹にかけての肉身や、垂下する天衣(てんね)のやわらかみのある質感表現は、奈良時代前期の様式を示す。
(岩井共二)
なら仏像館名品図録. 奈良国立博物館, 2022, p.149, no.203.
観音菩薩の鋳銅製(ちゅうどうせい)半肉の仏像型。このような型に薄い銅版をあて、槌(つち)でたたいて像の形に打ち出したものを「押出仏(おしだしぶつ)」という。押出仏は一つの型から同じものを複数生産できる利点がある。押出仏の遺品は多いが仏像型の遺品は珍しい。
(岩井共二)
みほとけのかたち 仏像に会う. 奈良国立博物館, 2013.7, p.92, no.58.
押出仏(おしだしぶつ)制作用の仏像型(ぶつぞうがた)とみられる品。厚手の長方形の銅版に、頭上に大きく化仏(けぶつ)を表して左手に水瓶(すいびょう)をとり、頭光(ずこう)を背負って蓮台上に直立する観音像を陽鋳する。面部・胸・腹などの肉身描写には、唐風の成熟した写実表現が示される。その像容は法隆寺献納宝物203号の押出二観音及び三如来像(東京国立博物館)、京都・鞍馬経塚出土の押出観音菩薩像(鞍馬寺、上半のみ現存)、唐招提寺所蔵の押出三尊仏像中の二体の観音像などの作例に酷似するが、細部形式が一致せず、本品から打ち出された品は知られていない。
(稲本泰生)
なら仏像館名品図録. 奈良国立博物館, 2012, 168p.

