宝相華文様の大振りの花を盛った花蓋の下に、二重円光をおう菩薩形を表す。右手は二・五指を立て、右膝上にのばし、左手も指を同様にし胸側にひねり、その手で宝相華様の蓮華をとる。左足を前にして、ゆったりと蓮華座上に坐している。こうした像容は、例えば当麻曼荼羅中尊を構成する三尊のうちの左脇侍の姿に近い。斜め右を見る軀躰の姿勢、左足をはずして楽坐する姿、胸元に二重にかける瓔珞、裳の下にさらに着ける下衣、また敷那子部に観察される丹地上に墨線で表した宝相華文様および華足の形式などは、いずれも上代の造形に見られるものである。また同様の印相を大英博物館所蔵敦煌出土樹下説法図の左脇侍に見ることができる。本図を奈良朝(あるいは唐風)の制に倣った擬古作とするのは異論のないところであろう。肉身を黄色に表現する点、金具を裏箔技法で表現する点、台座等に見られる巧みな配色、精緻な施工法などは平安仏画の伝統的技法にしたがっていると見られる。ただし、像容の多少のゆるみや、デッサンに曖昧な点があるところなど、おそらく数回の転写を経た画像と想像される。その制作年代は鎌倉時代十三世紀に置いて大過ないと思われる。
(梶谷亮治)
天平, 1998, p.257

- D015240
- 1996/07/31
- 全図

- D015242
- 1996/07/31
- 勢至菩薩

- D015243
- 1996/07/31
- 勢至菩薩上半身

- D015244
- 1996/07/31
- 台座

- A217086
- 1996/07/31
- 全図

- A217088
- 1996/07/31
- 勢至菩薩

- A217089
- 1996/07/31
- 勢至菩薩上半身

- A217090
- 1996/07/31
- 台座
もっと見る
収蔵品番号 | 1210-0 |
---|---|
部 門 | 絵画 |
区 分 | 絵画 |
部門番号 | 絵226 |
銘 文 | 外箱蓋表墨書「普賢菩薩像 巨勢金岡筆」 |
文 献 | 奈良国立博物館蔵品図版目録 仏教絵画篇. 奈良国立博物館, 2002, 169p.天平. 奈良国立博物館, 1998, 286p. |