円い胴部に細長い頸(くび)がつき、頸の上に細長い注口(ちゅうこう)、胴部に蓋(ふた)付きの注口をそなえる仙盞形水瓶は、唐時代に多く用いられ、仏前供養のほか僧の持物とされた。わが国でも作られ、布薩(ふさつ)水瓶(すいびょう)を生み出すなどわが国の工芸に大きな影響を与えた。
題箋
二つの口をもつ水瓶。胴部の側面に設けた蓋付の口から水を入れ、細長い顎部(けいぶ)の先端(尖台(せんだい))に口をつけて水を飲む構造で、このような水瓶は軍持(ぐんじ)または浄瓶(じょうへい)とも呼ばれる。僧侶の持ち物の一つであり、仏前に水を供える容器として用いられるようになった。千手観音の持物にこのかたちの水瓶が見られる。
(永井洋之)
みほとけのかたち 仏像に会う. 奈良国立博物館, 2013.7, p.59, no.35.
胴に注口を付け、長頸に尖台付きの蓋をのせた水瓶を仙盞形水瓶という。奈良・法隆寺や正倉院宝物に伝わる胡面(こめん)水瓶も注口を胡人の顔にかたどったものでこの形式に入る。本来は注口から水を入れ、尖台(せんだい)の棒状鈕(頸の上の尖った部分)に口をつけて飲むのに用いた。本品は大振りの仙盞形水瓶で、鋳造後、轆轤仕上げになるが、底板は共鋳とし、注口部と蓋は別鋳とする。総体に厚手で端正に作られているが、銅部の球状の張りが強く、肩に付けられた被蓋付きの皮袋形注口の造りも古様で、おそらく8世紀を遡る制作かと考えられる。制作地は中国と考えられるが、尖台の面取りの調子に新羅(しらぎ)製水瓶との類似も認められ、ただちには断じがたい。
(内藤栄)
奈良国立博物館の名宝─一世紀の軌跡. 奈良国立博物館, 1997, p.287, no.46.

