舞楽で、案摩(あま)の舞に続いて舞われる滑稽な所作の舞が二の舞で、その際、大きく笑った老爺の面(咲面(えみめん))と、大きく腫れて歪み、舌を出した老婆の面(腫面)とがつけられる。本面は、ユーモラスさの中にも穏和な表情がうかがえるのが特徴で、12世紀後半から13世紀初頭にかけての間の制作とみられる奈良・手向山八幡宮(たむけやまはちまんぐう)や法隆寺の面と共通する作風を指摘できる。キリ一材より彫出し、面の表裏とも布貼下地の上に彩色を施しているが、剥落(はくらく)が著しい。
(岩田茂樹)
なら仏像館名品図録. 奈良国立博物館, 2010, p.117, no.155.
舞楽で、案摩(あま)の舞に続いて、案摩の舞を真似て舞われる滑稽な所作の舞が二の舞で、大きく笑った老爺の面(咲面(えみめん))と、大きく腫れて歪み舌を出した老婆の面(腫面)とがその際につけられる。
二の舞腫面にはいくつかのタイプがあるが、いずれも顔を大きく歪めた苦しそうな表情を笑いの対象として表す点では共通している。本面は諸作例の中でもユーモラスさの中にも穏和な表情がうかがえるのが特徴で、12世紀後半から13世紀初頭にかけての間の制作とみられる奈良・手向山神社や奈良・法隆寺の面と共通する作風を指摘できるが、肉付けにやや誇張がみられることから、制作時期はその頃をやや下がった頃であろう。
キリ一材より彫出し、面の表裏とも布貼下地の上に彩色を施しているが、唇・舌にわずかに残る朱以外はほとんど剥落している。
(礪波恵昭)
奈良国立博物館の名宝─一世紀の軌跡. 奈良国立博物館, 1997, p.299, no.100.