単層の小型の塔で、密教修法が行われる壇上に置かれた。現在は失われているが、初層内部に舎利(しゃり)を安置していたと推定される。塔身は四方に扉を開け、内側に密教において八方を守護する神である八方天(はっぽうてん)が描かれている。彩絵には截金(きりかね)が併用されている。この塔は塔身が上部に丸みのある円筒形である点に特徴があるが、この形式は七〜八世紀頃のインドのストゥーパに源流がある。密教は、南インドにおいて真言宗初祖の龍猛(りゅうみょう)が鉄塔(南天鉄塔)に納められていた経典を得たことに始まるとされており、この形式の塔は南天鉄塔を写しているとしてわが国の密教で用いられた。
(内藤栄)
奈良博三昧―至高の仏教美術コレクション―. 奈良国立博物館. 2021.7, p.260, no.111.
二重基壇上に安置される木製宝塔。本瓦葺きに模した屋蓋上には、頂に火焔宝珠を置く相輪を具す。軸部は円筒形で、亀腹上に回縁・高欄をめぐらし、四方の観音開きの扉には切金をまじえて彩色された八方天を描く。基壇は四方に階段を設け、高欄をめぐらし、側面に各狭間を作る。風鐸の一部や宝鎖を失い、表面の彩色などに後世の修理のあとが残るが、木組みや構造は当初の姿をよくとどめている。内部に舎利容器を安置した舎利殿として製作されたものであろう。
ブッダ釈尊―その生涯と造形―, 1984, p.314, no.42

