特別展

浄瑠璃寺九体阿弥陀修理完成記念 特別展

聖地 南山城
―奈良と京都を結ぶ祈りの至宝―

 京都府の最南部、奈良市に隣接する地域は旧国名の(やま)(しろの)(くに)にちなんで、いま「(みなみ)(やま)(しろ)」と呼ばれています。なだらかな山間を木津川が流れる風光明媚な地であり、仏教の伝来後、7世紀にはこの地域でも寺院の建立がはじまりました。

 南山城が歴史の表舞台に登場するのは、(しょう)()天皇の()()(きょう)造営によってであり、木津川への架橋や寺院の建立などに(ぎょう)()の活躍がありました。平城京から長岡京・平安京への(せん)()以降も南山城は新旧両都をつなぐ回廊的な役割を果たす地域として、重要性を増すことになります。東大寺や興福寺といった奈良の大寺との深い関わりのなかで寺院があいついで建立され、また木津川流域の山々は俗世を離れた聖地として(さん)(がく)(しゅ)(げん)の拠点とされました。

 鎌倉時代には、はじめ興福寺に学んだ()(だつ)(しょう)(にん)(じょう)(けい)(かさ)()(てら)から(かい)(じゅう)(せん)()へと拠点を移し、(しゃ)()(にょ)(らい)()(ろく)()(さつ)(かん)(のん)菩薩に対する信仰を深めるとともに、南都の(かい)(りつ)(ふっ)(こう)に努めたことが特筆されます。さらに江戸時代には、各地で(ねん)(ぶつ)を広めた(たい)(ちゅう)(しょう)(にん)が晩年に(みかの)(はら)(木津川市加茂町)を拠点とするなど、南山城は各時代を通じて文字どおり日本仏教の聖地でありつづけました。  

 本展は、5か年に及ぶ保存修理が完成した浄瑠璃寺九体阿弥陀像のうち2()を修理後初公開するとともに、その優美な姿を寺外で拝することのできるまたとない機会となります。さらに南山城とその周辺地域の寺社に伝わる仏像や神像を中心に、絵画や典籍・古文書、考古遺品などを一堂に展観することで、この地に花開いた仏教文化の全貌に迫ります。多彩な作品を通して南山城のゆたかな歴史と文化を再認識していただくとともに、緑深いこの地域にいまもなお受け継がれる聖地の息づかいをご堪能ください。

国宝 阿弥陀如来坐像(9軀のうち その1)
京都・浄瑠璃寺[木津川市]

会 期

令和5年(2023)7月8日(土)~9月3日(日)
前期:7月8日(土)~8月6日(日)
後期:8月8日(火)~9月3日(日)

会 場

奈良国立博物館 東・西新館

休館日

月曜日(ただし、7月17日は開館)、7月18日(火)

開館時間

午前9時30分~午後6時
※入館は閉館の30分前まで

観覧料金

当日券前売・団体券(20名以上)
一般1,800円1,600円
高大生1,300円1,100円
小中生600円400円
  • 前売券の販売は4月28日(金)から7月7日(金)まで。
  • 販売場所:当館観覧券売場(休館日は販売いたしません)、公式オンラインチケットローソンチケット 【Lコード:55109】、チケットぴあ(通常チケット・特別チケット②)【Pコード:686-451】、チケットぴあ (特別チケット①)【Pコード:650-366】、セブンチケット【セブンコード:100-634】、楽天チケットイープラス、CNプレイガイド 【0570-08-9999(オペレーター対応)】ほかで販売
  • 障害者手帳またはミライロID(スマートフォン向け障害者手帳アプリ)をお持ちの方(介護者1名を含む)、奈良博メンバーシップ・プレミアムカード会員の方(1回目及び2回目の観覧)は無料(要証明)。
  • 奈良国立博物館キャンパスメンバーズ会員(学生)の方は当日券を400円(要学生証)、同(教職員)の方は1,700円でお求めいただけます(要証明)。
  • 観覧当日に証明書・会員証などの提示が必要です(一般と小学生以下を除く)。
  • 本展の観覧券で、名品展(なら仏像館・青銅器館)もご覧になれます。
  • 館内が混雑した際は、入場を制限する場合があります。
  • 本展は日時指定制ではありません。

特別チケット

仏像大使トークショー

  • 出演:みうらじゅん氏(イラストレーター)、いとうせいこう氏(作家・クリエーター)
  • 日時:令和5年(2023)7月22日(土)午後2時~午後3時30分
  • 会場:なら100年会館(奈良市三条宮前町7番1号)
  • 定員:1,400名
  • 料金:2,800円(税込、本展観覧券付き)
    ※座席がなくなり次第、販売終了
  • 販売場所:公式オンラインチケットローソンチケット【Lコード:55109】、チケットぴあ【Pコード:650-366】、イープラス
  • 販売期間:令和5年(2023)4月28日(金)~ 7月17日(月)

②福寿園謹製・展覧会オリジナルグッズ付きチケット

京都・山城地域で創業した福寿園。伝統の技術で仕上げた同社の煎茶ティーバッグ(5袋入)と前売券をセットにして販売します。パッケージは京都と奈良の県境にある南山城地域をモチーフにしたオリジナルデザインです。

  • 上限に達し次第、販売を終了します。
  • チケットに残数が発生した場合は、会場特設ショップでグッズのみ販売します(会場販売価格:756円・税込)。 
  • グッズは会期中、会場にてお引き換えください。

出陳予定作品一覧

展示件数:143件(うち国宝2件、重要文化財47件、都道府県指定文化財14件、京都府暫定登録文化財19件、市町村指定文化財10件)

公開講座

①令和5年(2023)7月29日(土)「華開く仏教文化~南山城の古代寺院から」
 講師:菱田 哲郎氏(京都府立大学文学部教授)
 受付期間:6月19日(月)午前10時~7月3日(月)午後5時

②令和5年(2023)8月19日(土)「南山城と律宗の美術」
 講師:谷口 耕生(奈良国立博物館企画室長)
 受付期間:7月3日(月)午前10時~7月17日(月)午後5時

③令和5年(2023)8月26日(土)「聖地 南山城の神と仏」
 講師:山口 隆介(奈良国立博物館主任研究員)
 受付期間:7月3日(月)午前10時~7月17日(月)午後5時

  • 時間:午後1時30分~3時(午後1時開場)
  • 会場:奈良国立博物館 講堂
  • 定員:各180名(事前申込抽選制)
  • 聴講無料(展覧会観覧券等の提示は不要です)
  • 申込方法 当館ウェブサイト「講座・催し物」→「公開講座」申込フォームより必要事項をご入力の上、お申し込みください(WEB申込のみとなります)。

※当選者には参加証をお送りいたします。当日必ずご提示ください。
※応募はお1人様1回でお願いいたします

音声ガイド

南山城地域の中心部である京都府木津川市出身で、京都やましろ観光大使も務められている横山さんが、南山城の歴史、古寺、そこに伝わる仏像の見どころなどをご案内します。

  • ナビゲーター:横山由依(女優/タレント)
  • 解説ナレーター:安井邦彦
  • 特別出演:仏像大使 みうらじゅん・いとうせいこう
  • 貸出料金:1台650円(税込)

プレスリリース

  • プレスリリース  3.0MB

主 催

奈良国立博物館、日本経済新聞社、テレビ大阪

後 援

京都府、京都府教育委員会、木津川市、京田辺市、城陽市、井手町、宇治田原町、笠置町、精華町、南山城村、和束町

協 賛

JR東海、竹中工務店、NISSHA、福寿園

特別協力

京都南山城古寺の会

協 力

京都山城地域振興社、日本香堂、仏教美術協会

チラシ

見どころ

九体阿弥陀修理完成記念―明治期以来、およそ110年ぶりの修理

浄瑠璃寺の本尊、国宝 阿弥陀如来坐像(()(たい)()()())は、明治42年から43年(1909~1910)以来、およそ110年ぶりに保存修理がおこなわれました。平成30年(2018)より5か年の計画で実施された保存修理が本年3月に完了し、最終年度に修理したその1とその8を特別公開します。

国宝 阿弥陀如来坐像(9軀のうちその8)
平安時代(12世紀) 京都・浄瑠璃寺[木津川市]
国宝 阿弥陀如来坐像(9軀のうちその1)
平安時代(12世紀) 京都・浄瑠璃寺[木津川市]

十二神将像、140年ぶりに里帰り。本尊の薬師如来と再会

現在、東京の静嘉堂文庫美術館と東京国立博物館が分蔵する十二神将像は、浄瑠璃寺三重塔の薬師如来とともに江戸時代までは浄瑠璃寺に(まつ)られていました。その後、十二神将は明治17年(1884)ごろまでにすべて寺を離れましたが、今回12軀揃っておそらく初めての里帰りが実現します。実に140年ぶりのことです。

(中央)重要文化財 薬師如来坐像 平安時代(11世紀) 京都・浄瑠璃寺[木津川市] 画像提供:京都国立博物館 展示期間:7/9~8/6
※薬師如来坐像の展示は7月9日(日)からとなります。

重要文化財 十二神将立像のうち 辰神・巳神・未神・申神・戌神 鎌倉時代(13世紀) 東京国立博物館 画像提供:東京国立博物館
重要文化財 十二神将立像のうち 子神・丑神・寅神・卯神・午神・酉神 鎌倉時代(13世紀)、亥神 鎌倉時代 安貞2年(1228)
東京・静嘉堂文庫美術館 画像提供:(公財)静嘉堂/ DNPartcom

主な出陳品

重要文化財
薬師如来坐像
[やくしにょらいざぞう]

平安時代(8~9世紀)
京都・薬師寺[和束町]

体の大部分を一材から彫り出す。両足首を衣で包む形式や、体や着衣の柔らかな質感表現など、奈良時代後期の乾漆像(かんしつぞう)を思わせる。一方、肩幅が広く奥行きのあるプロポーションには、平安時代初期の様式的特徴がみられる。

重要文化財
菩薩形立像
[ぼさつぎょうりゅうぞう]

平安時代(9~10世紀)
京都・常念寺[精華町]

かつて祝園(ほうその)神社の神宮寺にまつられていた像で、明治時代に近隣の常念寺(じょうねんじ)に移された。昭和25年(1950)の保存修理以前は左手に薬壺(やっこ)をとっていた。神仏習合(しんぶつしゅうごう)の過程で生み出された菩薩形の薬師像とみられる。

京都府指定文化財
牛頭天王立像
[ごずてんのうりゅうぞう]

平安時代(10~11世紀)
京都・朱智神社[京田辺市]

普賢寺谷(ふげんじだに)の西方、高ヶ峰(たかがみね)山上の朱智神社(しゅちじんじゃ)に鎮座(ちんざ)。忿怒相(ふんぬそう)で炎髪(えんぱつ)を立て、頭頂に牛頭をあらわす。同社は山城・河内(かわち)・大和(やまと)の三国の境界の山城国側に位置しており、外部からの邪気(じゃき)の侵入を防ぐ目的で本像を安置したのだろう。

重要文化財
十一面観音立像
[じゅういちめんかんのんりゅうぞう]

平安時代(10世紀)
京都・海住山寺[木津川市]

海住山寺の本尊。カヤの一材造で内刳(うちぐり)はない。つり上がった眉に切れ長の目の個性的な顔立ちが印象的。古来より観音信仰の聖地だったことを物語るかのように奈良時代の仏像に倣(なら)った表現が見られる。

重要文化財
十一面観音立像
[じゅういちめんかんのんりゅうぞう]

平安時代(10世紀)
京都・禅定寺[宇治田原町]

東大寺の別当(べっとう)を務めた平崇(へいそ)が建てた禅定寺(ぜんじょうじ)の本尊。同寺が完成した長徳元年(995)頃の作。意志的な表情や正面性の強い姿は奈良時代の乾漆造(かんしつづくり)の仏像を想起させる。この頃の奈良で展開していた仏像様式を示す大作。

京田辺市指定文化財
(左)降三世明王立像
(右)金剛夜叉明王立像
[ごうざんぜみょうおうりゅうぞう、こんごうやしゃみょうおうりゅうぞう]

平安時代(12世紀)
京都・寿宝寺[京田辺市] 画像提供:京都国立博物館

密教尊(みっきょうそん)の不動(ふどう)・降三世(ごうざんぜ)・軍荼利(ぐんだり)・大威徳(だいいとく)・金剛夜叉(こんごうやしゃ)からなる五大明王(ごだいみょうおう)のうちの2軀(く)。明治時代まで近隣の恵日寺(えにちじ)(廃絶)五大堂にまつられていた。同市内の正福寺(しょうふくじ)にはかつて一具をなした3軀があり、うち大威徳明王像はこの2軀と同時期の作。

重要文化財
愛染明王坐像
[あいぜんみょうおうざぞう]

平安時代(12世紀)
京都・神童寺[木津川市]

不動明王立像とともに神童寺(じんどうじ)に伝わる。弓を天に向けて矢を放とうとする姿は経典にもとづく天弓愛染(てんきゅうあいぜん)と呼ばれるもので、智証大師円珍(ちしょうたいしえんちん)の本尊と伝わる。天弓愛染の彫像は少なく、大変貴重である。

重要文化財
四天王立像
[してんのうりゅうぞう]

鎌倉時代(13世紀)
京都・海住山寺[木津川市]

スケールの大きい作風と隙(すき)のない彫技をみせる秀作。各像の形姿および身色(しんしょく)は、鎌倉時代初期再興の東大寺大仏殿四天王像(現存せず)に一致する。建保2年(1214)完成の五重塔に安置された可能性がある。

重要文化財
梵鐘
[ぼんしょう]

鎌倉時代 建久7年(1196)
京都・笠置寺[笠置町]

梵鐘は寺院で法要の合図や時報として打ち鳴らされる梵音具(ぼんおんぐ)。本品は鎌倉時代の初め、東大寺の復興の中心を担った重源(ちょうげん)が笠置寺(かさぎでら)に施入したもの。口縁部に複数の切り込みを入れる特徴的な形は、中国の梵鐘に倣ったものか。

重要文化財
兜率天曼荼羅
[とそつてんまんだら]

鎌倉時代(13世紀)
京都・興聖寺[京都市] 画像提供:京都国立博物館
前期展示(7/8~8/6)

弥勒菩薩が住む兜率天を描く本図は、阿弥陀浄土曼荼羅(あみだじょうどまんだら)と一対で、元仁2年(1225)の貞慶(じょうけい)13回忌に建てられた海住山寺経蔵(きょうぞう)に安置された。修理時に両幅の軸木に認められた墨書から一具性が明らかになった。

京都府暫定登録
阿弥陀浄土曼荼羅
[あみだじょうどまんだら]

鎌倉時代(13世紀)
京都・海住山寺[木津川市]
前期展示(7/8~8/6)

もとは兜率天曼荼羅(とそつてんまんだら)と一対で海住山寺経蔵(きょうぞう)に安置された。西方にある阿弥陀如来の浄土を描く絵画として、ハの字形を作る構図や諸尊の配置は類例がなく、貞慶(じょうけい)の阿弥陀浄土観を反映したと考えられる。

重要文化財
文殊菩薩騎獅像
[もんじゅぼさつきしぞう]

鎌倉時代(14世紀)
京都・大智寺[木津川市]

『橋柱寺縁起(きょうちゅじえんぎ)』によると、文保2年(1318)に建立された橋柱寺の本尊は行基(ぎょうき)が建てた泉大橋(いずみおおはし)の柱を用材にしたという。本像はこれにあたるとみられ、快慶(かいけい)作の安倍文殊院(あべのもんじゅいん)の文殊像を手本としている。獅子座(ししざ)は後補。

重要文化財
十一面観音坐像
[じゅういちめんかんのんざぞう]

鎌倉時代(13世紀)
京都・現光寺[木津川市]

現光寺(げんこうじ)の本尊。引き締まった体つきや動きのある衣文(えもん)が目を引く。貞慶(じょうけい)周辺の関与もと、補陀落山(ふだらくせん)に坐す十一面観音として制作された可能性が説かれる。和束町(わづかちょう)の金胎寺(こんたいじ)には、本像とよく似た弥勒菩薩像(みろくぼさつぞう)が伝わる。

重要文化財
一休宗純像
[いっきゅうそうじゅんぞう]

自賛
室町時代(15世紀)
京都・酬恩庵[京田辺市]
後期展示(8/8~9/3)

酬恩庵(しゅうおんあん)を開いた臨済宗大徳寺派の禅僧・一休宗純(1394~1481)の肖像画。伸びた髪に無精髭(ぶしょうひげ)を生やし、左足を踏み下げて椅子に座るなど、型にはまらない像主の個性を伝える。上部の賛は一休最晩年の筆跡である。

袋中上人坐像
[たいちゅうしょうにんざぞう]

江戸時代(17~18世紀)
京都・鶯瀧寺[木津川市]

各地を巡歴して念仏(ねんぶつ)を広め、晩年に瓶原(みかのはら)(木津川氏加茂町)を拠点とした袋中上人の像。袋中が建てた心光庵(しんこうあん)に安置されていたが、のちに近在の鶯瀧寺(おうりゅうじ)に移された。眼窩(がんか)が落ちくぼみ、頰(ほお)がこけた老翁(ろうおう)の姿にあらわされる。

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