特別展
式年造替記念特別展
春日大社 若宮国宝展
―祈りの王朝文化―
令和4年(2022)10月、春日大社の摂社、若宮神社の本殿(重要文化財)の御造替が完了いたします。御造替とは、社殿を造り替え、神宝や調度品などを新調する事業で、古来、20年に一度を式年として行われてきました。本展覧会はこの大事業の完成を記念して開催する特別展です。
春日若宮神は、春日大社本社本殿に祀られる四神の御子神として、長保5年(1003)3月3日巳刻に誕生したと伝えられています。御名を天押雲根命、あるいは五所王子(五番目の神の意)といい、水徳の神、五穀豊穣の神、さらには学問の神として広く信仰されてきました。毎年12月に行われる「春日若宮おん祭」は、大和一国を挙げた盛大な祭礼として全国にも知られ、保延2年(1136)の開始以来、およそ900年近い伝統を誇るものです。
本展では、藤原摂関家をはじめ平安貴族が若宮神に奉納した太刀や弓、飾り物など、当時最高峰の技術を集めた工芸品から、壮麗な王朝文化の世界を感じていただき、また古来の祭礼や神事芸能の数々をご紹介いたします。さらに、過去、現在の御造替にかかわる器物や歴史資料を通して、これを支えた人々の熱意と努力の軌跡をふり返ります。本展が、日本文化の奥深さと素晴らしさを再確認していただく機会になればと願っております。

奈良・春日大社

会 期
令和4年(2022)12月10日(土)~令和5年(2023)1月22日(日)
会 場
奈良国立博物館 東・西新館
休館日
毎週月曜日(ただし、1月2日[月・休]、1月9日[月・祝]は開館)
年末年始(12月28日~1月1日)、1月10日(火)
開館時間
午前9時30分~午後5時
※入館は閉館の30分前まで
観覧料金
当日 | 前売 | |
---|---|---|
一般 | 1,600円 | 1,400円 |
高大生 | 1,400円 | 1,200円 |
小中生 | 700円 | 500円 |
- 前売券の販売は、2022年10月11日(火)~12月9日(金)です。
販売場所:当館観覧券売場(休館日は販売いたしません)、近鉄主要駅、イープラス、ローソンチケット[Lコード:54474]、チケットぴあ[Pコード:993-836]、CNプレイガイド、楽天チケット、セブンチケット[セブンコード:096-592] - 本展の観覧券で、西新館にて開催する名品展「珠玉の仏教美術」、なら仏像館・青銅器館の名品展「珠玉の仏たち」・「中国古代青銅器」もご覧いただけます。
- 奈良国立博物館キャンパスメンバーズ会員(学生)の方は400円、同(教職員)の方は1,500円で当日券をお求めいただけます。観覧券売場にて学生証または職員証をご提示ください。
- 未就学児および障害者手帳またはミライロID(スマートフォン向け障害者手帳アプリ)をお持ちの方(介護者1名を含む)は無料です。
企画チケット
①奈良国立博物館「若宮国宝展」&春日大社国宝殿「杉本博司―春日神霊の御生展」共通チケット
料金 :2,000円(税込)
販売先 :イープラス、ローソンチケット、チケットぴあ、CNプレイガイド、楽天チケット、セブンチケット
販売期間:令和4年(2022)10月11日(火)~12月9日(金)
※杉本博司展の会期は、令和4年(2022)12月23日(金)から令和5年(2023)3月13日(月)です。
②クリスタルチャーム付きチケット
春日大社謹製の若宮御造替記念品。
「国宝 若宮御料古神宝類 金鶴及銀樹枝」が3Dレーザー彫刻加工されたクリスタルチャーム。
料金 :2,200円(税込)
販売先 :ローソンチケット
販売期間:令和4年(2022)10月11日(火)~12月9日(金)
限定枚数:300枚
※数量限定での販売になります。

③研究員レクチャー付き!夜間特別鑑賞チケット
料金 :2,500円(税込)
販売先 :イープラス
販売期間:令和4年(2022)10月11日(火)~12月9日(金)
限定枚数:各90枚(先着順)
- 特典① 奈良国立博物館の研究員によるレクチャーをご聴講いただけます。
- 特典② 閉館後の展示室を貸し切り、2時間ゆったりご観覧いただけます。
実施日程:①令和4年(2022)12月20日(火)午後4時~7時 担当=吉澤 悟(奈良国立博物館学芸部長)
②令和4年(2022)12月27日(火)午後4時~7時 担当=内藤 航(奈良国立博物館学芸部研究員)
- 上限に達し次第、販売終了します。
- 当日やむをえず参加できなかった場合は、会期中に1回のみ本展をご観覧いただけます。
出陳品
展示件数:89件(うち国宝25件、重要文化財10件、初公開5件)
公開講座
令和5年(2023)1月7日(土)「王朝文化が蘇る 春日若宮古神宝とその復元」
講師:松村 和歌子 氏(春日大社国宝殿主任学芸員)
- 時間:午後1時30分~3時(午後1時開場)
- 会場:奈良国立博物館 講堂
- 定員:90名(事前申込制)※抽選による座席指定制です。
- 聴講無料(展覧会観覧券等の提示は不要です)。
- 受付期間:11月28日(月)午前10時~12月12日(月)午後5時
- 申込方法:当館ホームページ「講座・催し物」→「公開講座」申込フォームより必要事項をご入力の上、お申し込みください(WEB申込のみとなります)。
- 当選者には12月23日(金)までに参加証をお送りします。当日必ずお持ちください。
※応募はお1人様1回でお願いいたします。
プレスリリース
主催
奈良国立博物館、春日大社、朝日新聞社、NHK奈良放送局、NHKエンタープライズ近畿
協賛
尾田組、天理時報社
協力
日本香堂、仏教美術協会
チラシ
主な出陳品

[かすがみやまんだら]
鎌倉時代(13世紀)
奈良・南市町自治会
前期展示(12/10~12/25)
春日大社の景観を描く春日宮曼荼羅のうち現存最大規模を誇る。社殿などの建築を克明に表し、樹木一本一本を精緻な筆致で描き込む。上空に浮かぶ円相内には春日大社の神々の本来の姿とされた五尊の仏菩薩が描かれている。

[もんじゅぼさつりゅうぞう]
鎌倉時代(13世紀)
東京国立博物館
頭上に5つの髻(もとどり)を結うことから、五髻文殊(ごけいもんじゅ)と称される。立像形式の五髻文殊はめずらしく、凛々しい顔だちは仏師善円(ぜんえん)の作風に近い。善円作の奈良国立博物館十一面観音像やアメリカ、アジア・ソサエティー地蔵菩薩像とともに、春日社の祭神(さいじん)を仏の姿であらわした本地仏として元来一具をなしていた5軀(く)中の3軀(三宮(さんのみや)・四宮(しのみや)・若宮(わかみや))とする説がある。建保3年(1215)に春日山内に建てられた興福寺四恩院(しおんいん)十三重塔にまつられていた本地仏五尊にあたる可能性がある。

[わかみやごりょうこしんぽうるい きんつるおよびぎんじゅし・ぎんじゅし]
平安時代(12世紀)
奈良・春日大社
若宮神社に納められた古神宝は、平安時代後期の貴族が愛した意匠や造形美を示す品であり、「若宮御料古神宝類(わかみやごりょうこしんぽうるい)」として一括で国宝に指定されている。本品はその中の一つで、王朝文化の美意識を今に伝える逸品。平安時代の貴族の日記類には、歌会や祝儀の場に、鶴亀を乗せた洲浜台(すはまだい)や雛道具(小さな調度品)など趣向を凝らした「作り物」が置かれ、めでたく雅な雰囲気(「風流(ふりゅう)」)を演出していた様子が見られる。金鶴及銀樹枝・銀樹枝(写真左)はそうした「作り物」の唯一の遺品である。純金の鶴が銀の枝に止まる精密な造形で、当初は洲浜や磯形(いそがた)に取り付けられていたと思われる。鶴は孤高の神仙、長寿の象徴である。若宮神社の創建に伴い、若宮神の成長と発展を祈って摂関家から奉納されたものと思われる。

[きんつるすはまだい]
令和4年(2022)
奈良・春日大社
金鶴洲浜台は、上記の金鶴及銀樹枝の材質や制作技法を調査研究し、復元新調されたもの。制作は重要無形文化財(彫金)保持者の桂盛仁(かつらもりひと)氏。今回の造替(ぞうたい)事業に伴い2組が制作されており、1組は若宮神社に奉納、1組は本展で初公開される。

[わかみやごりょうこしんぽうるい けぬきがたたち]
平安時代 保延元年(1135)
奈良・春日大社
春日大社若宮神社に奉納された古神宝類の一つ。持ち手の柄(つか)の部分に毛抜に似た形の透かしが入れられるためこの名がある。保延元年(1135)、藤原忠実(ふじわらのただざね)が若宮神社に寄進した太刀に当たると考えられている。外装の美しい装飾が見事で、鞘(さや)は紫檀(したん)の地に宝相華(ほうそうげ)や蝶の螺鈿文様(らでんもんよう)を施し、中央に銀地に鳥や岩の文様が黒く表れた樋(ひ)を作る。柄の部分に施された精緻な彫金(ちょうきん)文様にも目を見張る。

[わかみやごりょうこしんぽうるい けぬきがたたち ふくげんもぞう]
現代 平成15年(2003)
奈良・春日大社
若宮御料古神宝類(わかみやごりょうこしんぽうるい)の毛抜形太刀の復元模造作品。若宮御出現一千年祭を記念して2口制作され、そのうち1口は若宮神社の本殿に納められた。本展に出陳されるのはもう一方の品である。模造制作にあたっては、原品の保存修理の過程で行われた調査の成果が踏まえられ、原品の当初の姿を忠実に再現した模造作品が完成した。鞘(さや)の装飾は漆芸家の北村昭斎(きたむらしょうさい)氏、鞘は鞘師の髙山一之(たかやまかずゆき)氏、刀装の金具類は白銀師(しろがねし)の宮島宏(みやじまひろし)氏が担当した。

[きんじらでんけぬきがたたち]
平安時代(12世紀)
奈良・春日大社
春日大社本社本殿のうち第二殿より撤下(てっか)された豪華絢爛(ごうかけんらん)な毛抜形太刀。鞘には螺鈿(らでん)の技法を用い、竹林で雀を追いかける猫の姿を表す。さらに猫・雀の目や斑模様、竹葉には、茶や緑のガラス材を嵌(は)め込んで加飾する。近年の調査により、本品に装着される金具の多くはほぼ純金製であることが確認された。制作背景や奉献した人物は明らかでないが、猫を愛玩したといわれる藤原頼長(ふじわらのよりなが)の関与が指摘されている。

[きんじらでんけぬきがたたち ふくげんもぞう]
現代 平成30年(2018)
文化庁【通期】
文化庁の復元模造事業によって制作された金地螺鈿毛抜形太刀の復元模造品。光学調査(エックス線CTスキャン及び蛍光エックス線)の成果に基づき、可能な限り原品と同じ素材を用いて制作された。原品では、経年劣化によるくすみが生じている箇所があるが、忠実な模造制作によって制作当初の輝きを見ることができる。なお、復元模造品は春日大社によってもう1口制作され、そちらは平成28年(2016)第60次式年造替(本社本殿)の際に、春日大社本社本殿に納められた。

[わかみやごりょうこしんぽうるい ひらやなぐい]
平安時代 大治6年(1131)
奈良・春日大社
胡籙とは矢の携帯に用いられる武具のこと。紫檀(したん)製の背板(せいた)表面には、千鳥(ちどり)が飛び交う岩場を表わした銀板が嵌(は)め込まれ、裏面には螺鈿(らでん)によって宝相華(ほうそうげ)の間を尾長鳥や蝶の飛び交うさまが表わされている。本作は大治6年(1131)に崇徳(すとく)天皇が鳥羽(とば)上皇の住む三条殿へ行幸した際、供として加わった藤原頼長(ふじわらのよりなが)が使用したもので、それが保延2年(1136)に若宮神社に奉納された宝物と見なされている。

[わかみやごりょうこしんぽうるい ひらやなぐい ふくげんもぞう]
現代 平成30年(2018)
文化庁
国宝の原品は現在各部が分離しているが、胡籙本来の姿は方立(ほうだて)という小箱の中に矢配板(やくばりのいた)という複数の板を仕込み、そこに鏃(やじり)を収めて矢を束ね、背板に固定するというものであった。文化庁の復元模造事業により、可能な限り原品に忠実なかたちで制作された本品は、宝物の当初形態を明確に示すとともに、紫檀(したん)や螺鈿(らでん)、また白く輝く銀板と黒い文様の対比など、本来意図されていた装飾効果の妙をよく表現している。

[せんぐうばんじょうどうぐ]
江戸時代(17世紀)
奈良・春日大社
春日大社の式年造替(しきねんぞうたい)に当たって、社殿の建築に関連する儀式で使用された道具類。儀式で使うため、釿(ちょうな)や墨壺(すみつぼ)といった本来は実用の大工道具である品に華美な装飾が施されている。本品を収める箱には儀式に参列したと思われる大工の名が墨書(ぼくしょ)され、慶安3年(1650)の年紀も見える。このことから、同5年(1652)の第42次の式年造替の折に調(ととの)えられた品であることが推定される。

[しし・こまいぬ(ほんしゃだいいちでんてっかひん)]
鎌倉時代(13世紀)
奈良・春日大社
一対で社殿を守る獅子と狛犬の像。平成27年(2015)から同28年にかけて行われた春日大社第60次式年造替(しきねんぞうたい)に際し、春日大社本社本殿の第一殿から第四殿に安置されていた獅子・狛犬の計4対が撤下(神前に供えられた品を下げること)された。本作は第一殿のもので、最も古様を示す優品である。くぼみの深い眼窩(がんか)に丸い眼球を彫り、両眉の隆起が深い表情には守護獣にふさわしい森厳な趣がある。体に密着するように流れる鬣(たてがみ)には平安時代の名残をとどめるが、片方の前足を出して拝する者のほうへ少し顔を向ける動勢表現は鎌倉時代以降に増えるもので、時代の移り変わる過渡的な様相がみてとれる。

[しし・こまいぬ(かすがわかみやてっかひん)]
鎌倉時代(13世紀)
奈良・春日大社
初公開
近年に若宮神社から撤下された獅子と狛犬の像で、本展覧会が初公開となる。筋骨たくましい体つきや拝する者の方へ少し向ける自然な動きの表現には破綻が無く、作者の並々ならぬ力量がうかがえる。洲浜形(すはまがた)と岩形(いわがた)を組み合わせた台座も大部分が当初のもので、獅子・狛犬の台座としては珍しい形式だが、春日大社本社本殿のうち第二殿の1対が唯一同様の組み合わせであることが知られる。本展出陳の若宮御料古神宝類(わかみやごりょうこしんぽうるい)のうち木造彩色磯形残欠(もくぞうさいしきいそがたざんけつ)(国宝。平安時代)が第二殿と似た形状であることから本来は獅子・狛犬の台座であった可能性が以前に示されたが、本作の台座を踏まえて再度注目すべき指摘だろう。

[かすがわかみやごさいれいえまき]
江戸時代(17世紀)
奈良・春日大社(巻替えあり)
春日若宮おん祭の様子を描いた3巻からなる長大な絵巻。おん祭の華であるお渡り式(風流行列)のみでなく、前後の神事を含めて丁寧に記録する。伝統的行事であるおん祭の、江戸時代の様相を伝える貴重な作品。

[あかいとおどしおおよろい(たけとらすずめかざり)]
鎌倉~南北朝時代(13~14世紀)
奈良・春日大社
春日大社に伝わった大鎧の形式の甲冑。力強く、そして立体感に富んだ飾金物(かざりかなもの)には目を見張るものがある。なかでも大袖(おおそで)に配された竹と虎、そして全体を飛び回る雀の意匠から、本品は「竹虎雀飾」と通称される。赤色が鮮やかな威毛(おどしげ)は当初の色彩をとどめており、茜(あかね)で染められたものとみられる。金物(かなもの)を多用する点から本品は実戦用の甲冑ではなく、儀式や奉納を目的として制作されたものと考えられる。社伝では源義経(みなもとのよしつね)所用とされている。