特別展

貞享本當麻曼荼羅修理完成記念 特別展

中将姫と當麻曼荼羅
―祈りが紡ぐ物語―

 奈良・當麻寺の本尊である綴織當麻曼荼羅(つづれおりたいままんだら)(国宝、當麻寺蔵)は、およそ1250年前に現れた奇跡の曼荼羅として尊ばれてきました。そして、極楽浄土の様子を表す曼荼羅の成立に、極楽往生を望んだ奈良時代の貴族の娘である中将姫(ちゅうじょうひめ)が関わったという伝承は、鎌倉時代から現在にいたるまで、広く知られています。
 當麻曼荼羅と中将姫への長い信仰の歴史のなかで、およそ4メートル四方の巨大な織物である綴織當麻曼荼羅の絵画による写しが多数描かれてきました。中世以降、縮小版が多数作られた一方、同じ大きさの写しも製作されています。そのような中で、最も詳細に綴織當麻曼荼羅の図様を伝え、鮮やかな色彩で描かれた名品が、江戸時代の延宝7年(1679)に描かれ、貞享3年(1686)に霊元天皇の宸筆(しんぴつ)を得て完成した、貞享本當麻曼荼羅(じょうきょうぼんたいままんだら)(重要文化財、當麻寺蔵)です。
 本展では、修理を終えた貞享本の美しい姿をご覧いただき、修理過程で確認された資料を紹介しながら、貞享本製作プロジェクトの全貌をお示しします。そして貞享本の製作を當麻曼荼羅信仰史のひとつの画期と捉え、周辺の當麻曼荼羅信仰や、連動する中将姫信仰の動向についても、くわしくご紹介します。日本一の霊像として信仰され続けてきた當麻曼荼羅と、女人往生(にょにんおうじょう)の主人公として長く愛されてきた中将姫が人々に尊ばれ、そして人々を救ってきた歴史に触れていただければ幸いです。

重要文化財 當麻曼荼羅(貞享本)
江戸時代・貞享3年(1686)
(奈良 當麻寺)
中将姫物語(あらすじ)
奈良時代、貴族の娘として生まれた中将姫は、美しく清らかな心をもつ女性であった。しかし実母の死後、継母(ままはは)に疎(うと)まれ山中で殺害されそうになる。純粋な中将姫は助けられ山中で育つが、偶然父と再会し都に戻る。その後中将姫は當麻寺で出家。極楽浄土への思いを募らせていると、阿弥陀如来と観音菩薩の化身が現れ、蓮糸で當麻曼荼羅を織りあげ中将姫に極楽の姿を示す。そして中将姫は29歳のとき阿弥陀の来迎を受け無事極楽へ往生する。

会 期

令和4年(2022)7月16日(土)~8月28日(日)

会 場

奈良国立博物館 西新館

休館日

毎週月曜日(ただし、7月18日[月・祝]・8月15日[月]は開館)、7月19日[火]

開館時間

午前9時30分~午後6時(毎週土曜日は午後7時まで)
※入館は閉館の30分前まで

  • 会期・開館時間は今後の諸事情により変更する場合があります。
  • 同時開催の「名品展」(なら仏像館・青銅器館)とは休館日・開館時間が異なります。

観覧料金

当日 前売
一般1,600円1,400円
高大生1,000円800円
小中生500円300円
  • 前売券の販売は2022年5月23日(月)~7月15日(金)です。
  • 販売場所:当館観覧券売場(休館日は販売いたしません)、近鉄主要駅、ローソンチケットチケットぴあイープラスセブンチケットなど
  • 未就学児および障害者手帳またはミライロID(スマートフォン向け障害者手帳アプリ)をお持ちの方(介護者1名を含む)は無料です。
  • 本展の観覧券で、同時期開催の「わくわくびじゅつギャラリー」(東新館)、「名品展」(なら仏像館・青銅器館)、もご覧になれます。
  • 奈良国立博物館キャンパスメンバーズ会員(学生)の方は400円、同(教職員)の方は1,500円で当日券をお求めいただけます。観覧券売場にて学生証または職員証をご提示ください。

企画チケット

①アクリルキーホルダー付きチケット

曼荼羅に登場する化生童子の、ちょっと“シュールな”イラストがキーホルダーに!

料金:1,800円(税込)
販売プレイガイド:ローソンチケット
販売期間:2022年5月23日(月)~7月15日(金)

  • 数量限定での販売となります。
  • 本展観覧券とアクリルキーホルダー引換券の2枚発券。
  • 会場価格660円(税込)。ただし、本チケットが完売の場合、会場での販売はありません。
    違う絵柄(蓮池に浸かっている化生童子)のキーホルダーも会期中会場にて価格600円(税込)で販売予定。

②研究員レクチャー付き!夜間特別鑑賞チケット

料金:2,500円(税込)
販売プレイガイド:イープラス
販売期間:2022年5月23日(月)~7月15日(金)
限定枚数:各90枚(先着順)

  • 特典① 当館の研究員によるレクチャーをご聴講いただけます。
  • 特典② 閉館後の展示室を貸し切り、2時間ゆったりご観覧いただけます。

実施日程:①2022年7月22日(金)午後5時~8時 担当=北澤 菜月(奈良国立博物館学芸部主任研究員)
     ②2022年7月23日(土)午後6時~9時 担当=岩井 共二(奈良国立博物館学芸部美術室長)

  • 上限に達し次第、販売終了します。
  • 東新館にて開催する「わくわくびじゅつギャラリー はっけん!ほとけさまのかたち」もご観覧いただけます。ただし、「名品展」(なら仏像館・青銅器館)はご覧いただけません。
  • 当日やむをえず参加できなかった場合は、会期中に1回のみ本展をご観覧いただけます。

出陳品

展示件数:77件(うち国宝5件、重文13件)

公開講座

①令和4年(2022)8月6日(土)「貞享本當麻曼荼羅とその周辺」
 講師:北澤 菜月(奈良国立博物館学芸部主任研究員)

②令和4年(2022)8月20日(土)「中将姫説話の展開」
 講師:日沖 敦子 氏(文教大学文学部日本語日本文学科准教授)

  • 時間:午後1時30分~3時(午後1時開場)
  • 会場:奈良国立博物館 講堂
  • 定員:各90名(事前申込制)※抽選による座席指定制となります。
  • 聴講無料(展覧会観覧券等の提示は不要です)
  • 応募期間:5月23日(月)~6月30日(木)必着
  • 申込方法 
    ①インターネットから応募する場合
     応募フォームはこちら
    ②はがきまたはファクスから応募する場合
     はがきかファクスに、代表者の郵便番号、住所、氏名、年齢、電話番号と同伴者(1名まで)の氏名、年齢、参加希望日を明記して、
     下記へご応募ください。
     はがき:〒539-0041(住所不要)読売新聞大阪本社文化事業部「中将姫展」公開講座係
     ファクス:06-6366-2370
     ※はがきでの応募の際、消せるボールペンは使用しないでください。
     ※お預かりした個人情報は、本公開講座の連絡のみに使用します。
  • 当選者には7月14日(木)までに参加証をお送りします。当日必ずご持参ください。
  • 本参加証で展覧会場に入場することはできません。

【募集に関するお問い合わせ】
読売新聞大阪本社文化事業部 電話:06-6366-1848(平日午前10時~午後5時)

関連イベント

蓮糸織り体験ワークショップ

中将姫の物語に登場する綴織當麻曼荼羅は、蓮から作った糸を織って作られたと伝わります。このワークショップでは、蓮糸織りについてのご紹介をしたあと、唐招提寺様よりご提供いただいた本物の蓮から糸を繰り出す作業を実際に体験していただき、蓮糸を織り込んだコースターを制作してお持ち帰りいただきます。

  • 日時:令和4年(2022)7月31日(日)
    第1回:午前10時30分~12時、第2回:午後2時~3時30分 ※各回10名 (事前申込制、申込多数の場合は抽選)
  • 参加費:無料(ただし、本展の観覧券やプレミアムカード等の提示が必要です)
  • 対象:小学校高学年以上
  • 会場:奈良国立博物館 地下回廊
  • 講師:大和 恵子氏(一般社団法人豊前小倉織研究会)、大橋 有佳氏(元興寺文化財研究所)
  • 協力:唐招提寺、科学研究費助成事業基盤研究(C)「藕糸織の基礎的研究-非破壊調査による藕糸織の再検討を中心に」(研究代表者=富岡優子)

※新型コロナウイルス感染拡大状況により、内容を変更する場合がございます。

音声ガイド

貸出料金:1台600円(税込) 所要時間:約35分

ナレーター  早見沙織さん(声優)

音声ガイドは声優の早見沙織さん(主なアニメ出演作品:「ONE PIECE」ヤマト役、「SPY×FAMILY」ヨル役など)がナレーターとして、皆様をご案内します。

當麻曼荼羅と中将姫にまつわる信仰の世界をわかりやすく紐解く内容です。

どうぞお聴き逃しなく。

當麻寺特別公開

裏板曼荼羅御開帳

令和4年(2022)7月16日(土)~8月28日(日)の全日

曼荼羅堂の国宝・曼荼羅厨子の裏扉が開扉され、秘仏「裏板曼荼羅」がご開帳されます。

曼荼羅堂拝観料:500円(税込)

国宝「東塔・西塔」初層特別開扉

令和4年(2022)7月16日(土)~8月28日(日)の毎土・日曜日及び祝日

古代の双塔伽藍様式を示す国宝の三重塔(東塔・西塔)を、西塔修理完成後初公開します。

無料

【特別公開に関するお問合せ】

當麻寺奥院 電話:0745-48-2008

〒639-0276 葛城市當麻1263

主催

奈良国立博物館、當麻寺、読売新聞社、NHK奈良放送局

協賛

清水建設、大和ハウス工業

協力

日本香堂、仏教美術協会

チラシ

先行チラシ
チラシ

主な出陳品

中将姫像
[ちゅうじょうひめぞう]

鎌倉時代(14世紀)
奈良・當麻寺中之坊

現存最古の中将姫像。剃髪(ていはつ)した出家後の姿で、袈裟(けさ)をまとい、念珠を手にして合掌する。前の机に置かれた経巻は、中将姫が書写したと伝えられる『称讃浄土経(しょうさんじょうどきょう)』とみられる。また画面上方は見えにくくなっているが、中将姫を迎え極楽へと戻る阿弥陀聖衆の一行が描かれ、色紙形の最後には中将姫が往生した日(宝亀6年3月14日)が記されている。

国宝 當麻曼荼羅厨子扉
[たいままんだらずしとびら]

鎌倉時代 仁治3年(1242)
奈良・當麻寺

當麻寺本堂に安置される国宝當麻曼荼羅厨子の扉。現在は取り外され別置保存されている。奈良時代末に安置された厨子に、鎌倉時代の仁治3年(1242)に取り付けられた扉で、黒漆塗に蒔絵を施し蓮池をあらわす美麗な品である。下方には多くの結縁者の名前が記され、僧侶のみならず、源頼朝、北条泰時といった武家の有力者、九条教実ら公家の有力者を含む多数の僧俗男女が結縁しており、歴史史料としても貴重。

国宝 当麻曼荼羅縁起
[たいままんだらえんぎ]

鎌倉時代(13世紀)
神奈川・光明寺
半期展示替

當麻寺の本尊である綴織當麻曼荼羅の成立に関する縁起説話を題材にした現存最古の絵巻物。當麻寺の草創について簡略に触れた上で、出家した一人の貴族女性(のち中将姫と呼ばれる)の前に、阿弥陀の化身の尼と、観音の化身の織女が現れ、蓮糸で巨大な曼荼羅(綴織當麻曼荼羅)を織り上げたという話を、大画面を用いて表す。

重要文化財 當麻曼荼羅(貞享本)
[たいままんだら(じょうきょうぼん)]

江戸時代 貞享3年(1686)
奈良・當麻寺

江戸時代の貞享3年(1686)に完成した當麻曼荼羅。當麻曼荼羅とは、當麻寺の根本本尊である綴織當麻曼荼羅(8世紀)の図様を写す曼荼羅の総称で、中央に極楽浄土、周囲に『観無量寿経』の内容を表す画面構成である。本図は根本本尊の図様を最もよく伝える同大の曼荼羅で、近年の修理により色とりどりの彩色が一層鮮やかになった。修理時に軸木内から発見された文書類や、周辺の関連史料から描かれた経緯も明らかで、京都・大雲院の僧性愚が、綴織當麻曼荼羅、室町時代の写しである文亀本當麻曼荼羅の修理を行ったうえで作らせ、當麻寺に納めたことが知られる。

中将姫坐像(厨子入)
[ちゅうじょうひめざぞう(ずしいり)]

江戸時代 延宝9年(1681)
京都・大雲院

中将姫は綴織當麻曼荼羅に関する縁起説話に登場する奈良時代の貴族女性で、曼荼羅は姫の強い思いを受けて奇跡的に出現したと伝えられる。この中将姫像は、綴織、文亀本の修理を経て、貞享本當麻曼荼羅を作らせた大雲院の性愚が、一連の事業が一段落した時期に作らせた。厨子扉には縁起説話を題材にした絵画が描かれている。

称讃浄土仏摂受経
[しょうさんじょうどぶつしょうじゅきょう]

奈良時代(8世紀)
奈良・當麻寺奥院
半期展示

『阿弥陀経』の異訳で、釈迦が阿弥陀の西方極楽浄土への往生を勧める内容。當麻曼荼羅の縁起説話で中将姫が一千巻のこの経典を書写したとされたことから、現存する経典のほとんどは中将姫ゆかりの霊宝として伝わる。本来は天平宝字7年(760)に光明皇后の四十九日の忌日(きじつ)に当たって大量書写された写経であったと考えられる。

重要文化財 刺繡阿弥陀三尊来迎図
[ししゅうあみださんぞんらいごうず]

鎌倉~南北朝時代(13~14世紀)
滋賀・宝厳寺
半期展示

刺繡で表された阿弥陀三尊来迎図。中世には、主に死者の供養のためにこうした繡仏が多数作られたが、その多くは中将姫作と伝承されて後世に伝えられた。本図もその一つで上方や周囲に梵字を表す構成も興味深いが、下方に尼と女性が手を合わせ向かい合うさまが表されていることから、製作時に中将姫説話が意識された可能性がある。

藕糸織阿弥陀三尊来迎図
[ぐうしおりあみださんぞんらいごうず]

隠元隆琦賛
江戸時代 寛文11年(1671)
福岡・福聚寺
半期展示

北九州市の黄檗宗寺院である福聚寺(ふくじゅじ)に伝わる蓮糸織り(藕糸織(ぐうしおり))仏画の一つ。福聚寺を創建した小倉藩初代藩主小笠原忠真(おがさわらただざね)の側室であった永貞院(えいていいん)が、中将姫に私淑(ししゅく)して作らせた。賛者の隠元隆琦(いんげんりゅうき)は黄檗宗の開祖で、福聚寺初代住職即非如一(そくひにょいつ)の師。
近年の調査で実際に蓮糸が織り込まれていることがはじめて確認されており、年代が明らかな最古の藕糸織作品として貴重な存在である。

金春禅鳳自筆本「當麻」
[こんぱるぜんぽうじひつぼん たえま]

室町時代(16世紀)
東京・法政大学能楽研究所般若窟文庫
半期展示

世阿弥作と考えられる能「當麻」の写本。書写した金春禅鳳(こんぱるぜんぽう)(1454-?)は、応仁の乱後の能界を代表する能作者で、「當麻」の謡本としては現存最古級になる。この曲では、熊野詣からの帰途に當麻寺に参詣した僧たちが、かつて中将姫の前に現われた化尼と化女から、念仏の功徳や、當麻曼荼羅の謂われを聞く。化尼と化女が雲に乗って消えた後、中将姫の精魂が現れ、阿弥陀の浄土と念仏を讃えて舞う。

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