特別陳列
特別陳列
帝国奈良博物館の誕生
―設計図と工事録にみる建設の経緯―
帝国奈良博物館(現在の奈良国立博物館なら仏像館)は明治27年(1894)12月に竣工し、翌年4月に開館しました。設計は明治時代を代表する建築家で当時宮内省内匠(たくみ)寮技師だった片山東熊(かたやまとうくま)(1854~1917)が担当し、奈良県に誕生した最初の西洋建築として知られています。片山は工部大学校造家(ぞうか)学科(東京大学工学部建築学科の前身)の第一期卒業生で、帝国京都博物館(京都国立博物館明治古都館。明治28年)、奉献美術館(東京国立博物館表慶館。明治41年)、東宮御所(迎賓館赤坂離宮。明治42年)などの作品を遺しましたが、帝国奈良博物館はこれらに先立つ若き日の代表作として貴重です。
近年おこなわれた設計図と工事録の分析により、この建物の建設の経緯があらためて詳しくわかってきました。明治24年(1891)に起こった濃尾(のうび)地震を経験して堅牢性を重視したこと、窓からの採光の工夫、雨仕舞(あまじまい)への配慮、さまざまな要因による工事の遅延、予算不足の問題などから、国内での事例がまだ少なかった博物館建築を生み出すための関係者たちの苦労がうかがわれます。
この展覧会では、設計図と工事録をとおして、明治時代中頃の奈良の地に博物館が誕生した道のりを振り返ります。

(「内匠寮奈良博物館建築工事図面」のうち)
(奈良国立博物館)
会 期
令和3年2月6日(土)~3月21日(日)
会 場
奈良国立博物館 西新館
休館日
毎週月曜日(ただし2月8日、3月1日・8日は開館)
開館時間
午前9時30分~午後5時
※ 入館は閉館の30分前まで
観覧料金
一般 | 大学生 |
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700円 | 350円 |
- 高校生以下および18歳未満の方、満70歳以上の方、障害者手帳またはミライロID(スマートフォン向け障害者手帳アプリ)をお持ちの方(介護者1名を含む)は無料です。
- 高校生以下及び18歳未満の方と一緒に観覧される方は、一般100円引き、大学生50円引きになります。
- この観覧料金で、特別陳列「お水取り」(東新館)、名品展「珠玉の仏教美術」(西新館)、2月23日(火・祝)より名品展「珠玉の仏たち」・「中国古代青銅器」をあわせてご覧になれます。
出陳品
51件
公開講座
公開講座の聴講には事前の申し込みが必要です。
「講座・催し物」内の申込み画面より必要事項を入力の上、お申込みください。詳しくは、こちらへ。
◆令和3年3月13日(土)「帝国奈良博物館の誕生 -人と建築-」
講師:宮崎 幹子(奈良国立博物館学芸部 情報サービス室長)
時間 | 午後1時30分~3時(午後1時開場) |
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会場 | 当館講堂 |
定員 | 90名(事前申込先着順) |
申込方法 | 奈良国立博物館ホームページ「講座・催し物」内の申込み画面より必要事項を入力の上、お申込みください(web申込のみとなります)。 |
受付期間 | 2月15日(月)午前10時~3月12日(金)午後5時まで。 |
- 聴講無料(展覧会観覧券等の提示は不要です)。
- 聴講には事前申込が必要です(当日申込でのご参加はできません)。
- 入場の際には、受付完了メール画面をご提示ください。
- 応募はお1人様1回でお願いいたします。
- 定員に達し次第締め切りとさせていただきます。
主催
奈良国立博物館
協力
仏教美術協会
動画配信(ニコニコ美術館)
特別陳列「帝国奈良博物館の誕生」&なら仏像館・特別公開「金峯山寺 金剛力士立像」を巡ろう。
日時 | 2021年3月8日(月)19時 |
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会場 | 当館から生中継で配信。タイムシフト配信中。 |
出演者 | 宮崎幹子(当館 学芸部情報サービス室長) 内藤航(当館 学芸部研究員) 橋本麻里(永青文庫 副館長) |
チラシ


主な出陳品

[きょうとおよびならはくぶつかんけんちくこうじろくのうち いち りんぎうかがいるい]
東京 宮内庁宮内公文書館
紙本 墨書
明治23~28年(1890~95)
帝国奈良博物館の建築工事に関する文書を綴じた簿冊(ぼさつ)が7冊伝わり、5年にわたる事業の詳細がわかる。帝国博物館は、宮内省内匠寮(たくみりょう)に工事監督を委嘱し、清水満之助(2代。「清水」4代当主)が施工を請け負った。文書は宮内省、内匠寮、帝国博物館、奈良博物館、清水によって作成され、それぞれが専用の罫紙を使っている。これは明治23年2月4日に、帝国博物館総長九鬼隆一から内匠頭(たくみのかみ)堤正誼(つつみまさよし)に宛てて出された文書で、博物館建築工事完了までの監督を内匠寮に委嘱(いしょく)している。

[ていこくならはくぶつかんおもてしょうこうぐちひながた]
奈良国立博物館
木製
明治27年(1894)
1/20サイズの部分模型。複数のヒノキ材を寄せてつくられる。基礎の石貼りや外壁の漆喰の目地も丁寧に表現しているが、ペディメントの飾りなど、実際とは異なる箇所もある。屋根には瓦を葺かずに小屋組をうかがえるようにしている。
[]
奈良国立博物館
和紙 絹本 墨書 彩色 明治23~28年(1890~95)
帝国奈良博物館建設に関係する設計図で、和紙や絹に墨筆や烏口(からすぐち。製図用のペン)を使って大半は肥痩の無い線で描くが、装飾図はデッサン風である。日本人建築家が手がけた最初期の西洋建築の設計や建設をめぐる実態が記録されており、博物館というビルディングタイプを生み出す際の思慮の痕跡がうかがわれる点でも、近代建築史上重要。

[ならはくぶつかんしんちくいろわけず ひゃくぶんのいち]
右側に建物の正面、左側には背面の立面を描く。各色で煉瓦(赤色)、沢田石(静岡県産凝灰岩。青色)、木(黄色)、鉄(灰色)を表す。壁体は石造を模した漆喰仕上げとしているので、実際の印象とは異なっている。

[ならはくぶつかんしょうめんしょうこうぐちかなばかりにじゅうぶんのいちのず]
表昇降口の立面詳細図の左に、昇降口の断面図と脇壁の断面図を並べる。櫛形ペディメントの下には「帝國奈良博物館」の文字が記される。断面図には、柱上に渡された水平材に鉄製の梁(はり)、軒上手摺に鉄棒のアンカーが描かれ、構造への配慮がわかる。

[しょうめんしょうこうぐちてんじょうちゅうしんかざりせいすん]
表昇降口の天井中心飾りの現寸図。図案は現状と概ね同じだが、細部には異なる箇所もある。円の中心から鉛筆で放射状に補助線が引かれ、その上に図が描かれている。伸びやかな筆致が見どころ。