特別陳列

修理完成記念 特別陳列

薬師寺の名画
―板絵神像と長沢芦雪筆旧福寿院障壁画―

 薬師寺が所蔵する旧福寿院障壁画(ふくじゅいんしょうへきが)は、近年奇想(きそう)の画家として注目を集める円山四条派(まるやましじょうは)の画家・長沢芦雪(ながさわろせつ)(1754~99)の代表作であり、また元禄期に奈良で多くの画事を残した明誉古磵(みょうよこかん)が富士図の絵筆を執っていることでも知られています。本障壁画について平成25年から足かけ4年余りにわたる修理が実施され、芦雪と古磵の筆力が遺憾なく発揮された大画面の彩りがよみがえりました。
 本展はこの修理完成を記念して、旧福寿院障壁画33面を一堂にお披露目するとともに、同じく近年本格修理と復元模写制作が行われた薬師寺鎮守八幡宮伝来の堯儼(ぎょうごん)筆板絵神像(いたえしんぞう)(重要文化財)を同時公開するものです。本展を通じて薬師寺に伝わった名画の魅力とともに、文化財修理の意義を広く知っていただければ幸いです。

重要文化財 板絵神像(北殿第三間)堯儼筆(奈良・薬師寺)
旧福寿院障壁画(松虎図襖)長沢芦雪筆(奈良・薬師寺)

会 期

平成30年(2018)2月6日(火)~3月14日(水)

会 場

奈良国立博物館 西新館

休館日

2月19日(月)・26日(月)

開館時間

午前9時30分~午後5時(金・土曜日は午後8時まで)
※2月8日(木)・11日(日)~14日(水)は午後8時30分まで、2月9日(金)・10日(土)は午後9時まで開館
※3月1日(木)・4日(日)~8日(木)・11日(日)・13日(火)・14日(水)は午後6時まで開館
※3月12日(月)は午後7時まで開館
※いずれも入館は閉館の30分前まで

観覧料金

 一般大学生
個人520円260円
団体410円210円
  • 高校生以下および18歳未満の方、満70歳以上の方、障害者手帳をお持ちの方(介護者1名を含む)は無料です。
  • 団体料金は20名以上です。
  • 中学生以下の子どもと一緒に観覧される方は、団体料金が適用になります。[子どもといっしょ割引]
  • 2月22日(木)はご夫婦で観覧される方は半額となります。[夫婦の日割引]
  • この観覧料金で、同時開催の特別陳列「お水取り」(東新館)、名品展「珠玉の仏教美術」(西新館)・「珠玉の仏たち」(なら仏像館)・中国古代青銅器[坂本コレクション](青銅器館)もご覧になれます。

出陳品

5件 51点(うち重要文化財1件)

展覧会図録

A4版 64ページ 1,000円
*地下ミュージアムショップにて
 販売しております 。
*図録の購入はこちらへ 

公開講座

終了いたしました

平成30年(2018)3月3日(土)「長沢芦雪と薬師寺旧福寿院障壁画」
講師:安永拓世氏(東京文化財研究所研究員)

主催

奈良国立博物館、薬師寺

後援

文化庁、奈良市教育委員会

チラシ

主な出陳品

重要文化財 板絵神像
[いたえしんぞう]

堯儼(ぎょうごん)筆
奈良 薬師寺
板絵著色 鎌倉時代 永仁3年(1295)
 
板絵神像復元模写
文化庁
板絵著色 現代(21世紀)

薬師寺鎮守八幡宮(やくしじちんじゅはちまんぐう)(休ヶ岡八幡宮(やすみがおかはちまんぐう))の南北脇殿(わきでん)の柱間(はしらま)に安置されていた板絵の神像。全6面のうち5面は男神、北殿第三間の1面のみ女神で構成され、合計22神を描く。傍(かたわ)らの短冊銘に神名が墨書され、「竜田明神(たつたみょうじん)」にはもみじ、「柳本明神(やなぎもとみょうじん)」には柳など各神に関連するとみられる樹木を背障(はいしょう)に表している。裏面の朱漆銘(しゅうるしめい)により、寛治年中(1087~94)の頃に描かれた「神像障子(しんぞうのしょうじ)」が虫害により破損したため、永仁3年(1295)3月21日に南都の絵仏師(えぶっし)堯儼(ぎょうごん)が描き改めたものと知られる。近年実施された本格修理の知見をもとに制作された復元模写が平成26年(2014)に完成し、往時の彩りがよみがえった。

獅子・狛犬
[しし・こまいぬ]

奈良 薬師寺
木造 彩色・漆箔 鎌倉時代(14世紀)

大型の獅子・狛犬一対で、薬師寺の鎮守、休ヶ岡八幡宮(やすみがおかはちまんぐう)に伝来したとみられる。表情や姿勢、肉取りのいずれもまことに力強い。年輪年代調査の結果、用材の伐採(ばっさい)年の上限は西暦1271年であると判明した。平成27~29年度の3カ年にわたり、(公財)美術院の施工により保存修理を実施した。修理後、初公開。

奈良市指定 旧福寿院障壁画
[きゅうふくじゅいんしょうへきが]

長沢芦雪(ながさわろせつ)・明誉古磵(みょうよこかん)筆
奈良 薬師寺
紙本著色 江戸時代(18世紀)
※画像は旧福寿院障壁画のうち松虎図

薬師寺の一塔頭(たっちゅう)であった福寿院に設(しつら)えられていたとされる障壁画33面は、長沢芦雪(ながさわろせつ)(1754~99)が襖絵(ふすまえ)28面及び杉戸絵(すぎどえ)1面を、明誉古磵(みょうよこかん)(1653~1717)が襖絵4面を手がけている。 長沢芦雪は円山応挙(まるやまおうきょ)のもとで学びつつ、斬新な発想で筆をふるい、近年「奇想」の画家として知られる絵師、古磵は僧侶ながら奈良や京都などで精力的に絵画制作を行った画僧(がそう)であった。この障壁画は、芦雪の南紀滞在後の円熟した画技を示す逸品であるとともに、古磵が薬師寺に残した重要な画蹟のひとつといえる。このうち古磵筆「富士図」4面は、芦雪の「松虎図」の裏面に貼り込まれていたものだが、同寺に残る古磵の「雲龍図」(出陳番号5)ともとは一対であった可能性がある。
いずれの図も、かつては破れや汚れなどが著しかったが、平成25年から4年余りをかけて行われた修理で画面が一新された。さらに、襖の表裏に描かれていた絵が、表面・裏面に分けて仕立て直され、別々に保存されることとなった。福寿院の建物は現在失われたが、本障壁画は薬師寺にとどまり、いまに伝わっている。

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