特別陳列
特別陳列
お水取り
奈良に春を呼ぶ行事とされる東大寺二月堂の「お水取り」は、正式には修二会(しゅにえ)といい、春を言祝(ことほ)ぐ仏教法会です。夕刻に二月堂へ向かう練行衆(れんぎょうしゅう)(参籠僧)の足下を明々と照らす「お松明」がよく知られていますが、法会の中心となるのは本尊・十一面観音菩薩に日頃の罪過を懺悔(さんげ)して五穀豊穣・除災招福を祈る「悔過(けか)」という儀式です。
「お水取り」は天平勝宝4年(752)に、東大寺の実忠和尚が創始したと伝えられています。それ以来、一度も絶えることなく「不退の行法」として、戦乱や火災などの危機を乗り越えながら、1260年を超える伝統を守り続けてきました。高名な「お水取り」の儀式は3月12日の深夜に行われますが、実際には2月20日から月末までの前行(準備・潔斎期間)と、3月1日から14日(15日未明)の本行とを合わせた約1ヶ月の間、様々な儀礼を執り行います。
本展は、毎年、「お水取り」がおこなわれる期間に合わせて開催する恒例の企画です。法会に用いられた法具や、儀式の様子を伝える文書、東大寺ゆかりの絵画、出土品などを通じて、奥深い「お水取り」の世界をご堪能いただければ幸いです。

(奈良・東大寺)
会 期
平成30年(2018)2月6日(火)~3月14日(水)
会 場
奈良国立博物館 東新館
休館日
2月19日(月)・26日(月)
開館時間
午前9時30分~午後5時(金・土曜日は午後8時まで)
※2月8日(木)・11日(日)~14日(水)は午後8時30分まで、2月9日(金)・10日(土)は午後9時まで開館(「なら瑠璃絵」開催期間中)
※3月1日(木)・4日(日)~8日(木)・11日(日)・13日(火)・14日(水)は午後6時まで開館(二月堂 お松明の期間)
※3月12日(月)は午後7時まで開館(二月堂 籠松明の日)
※いずれも入館は閉館の30分前まで
観覧料金
一般 | 大学生 | |
個人 | 520円 | 260円 |
団体 | 410円 | 210円 |
- 高校生以下および18歳未満の方、満70歳以上の方、障害者手帳をお持ちの方(介護者1名を含む)は無料です。
- 団体料金は20名以上です。
- 中学生以下の子どもと一緒に観覧される方は、団体料金が適用になります。[子どもといっしょ割引]
- 2月22日(木)はご夫婦で観覧される方は半額となります。[夫婦の日割引]
- この観覧料金で、同時開催の特別陳列「薬師寺の名画」(西新館)、名品展「珠玉の仏教美術」(西新館)・「珠玉の仏たち」(なら仏像館)・中国古代青銅器[坂本コレクション](青銅器館)もご覧になれます。
- 2月6日(火)~3月9日(金)の午前中までの間、東大寺二月堂・東大寺ミュージアムにおいて配布される無料券をご持参の方は、3月7日(水)・8日(木)・9日(金)に限り、1回につき2名様まで本展を無料で観覧できます。
出陳品
69件(うち重要文化財20件)
展覧会図録

A4版 72ページ 1,300円
*地下ミュージアムショップにて販売しております 。
*図録の購入はこちらへ
*2016年に発行したものです。
公開講座
終了いたしました
平成30年(2018)2月17日(土)「不退の行法、東大寺修二会(お水取り)」
講師:北河原公敬師(東大寺長老)
関連催事
終了いたしました
平成30年(2018)2月10日(土)「お水取り『講話』と『粥』の会」
平成30年(2018)3月6日(火)「お水取り展鑑賞とお松明」
ボランティア解説
終了いたしました
当館ボランティアが、展示のミニ・ツアー解説をおこないます。
日時:3月1日(木)~3月14日(水)の毎日 14:00~(約30分)
主催
奈良国立博物館、東大寺、仏教美術協会
チラシ
主な出陳品

[にがつどうほんぞんこうはい ずこう]
奈良 東大寺
銅造 奈良時代(8世紀)
修二会(しゅにえ)の本尊である二月堂十一面観音(大観音(おおがんのん))の光背の頭光です。江戸時代の寛文7年(1667)に二月堂の火災で、本尊の光背は破損して断片が残るだけになってしまいました。本品は、それらを復元的に配置したもので、表面には華麗な文様が施されています。
※二月堂本尊光背 身光(しんこう)は、なら仏像館にて陳列。

[にがつどうまんだら]
奈良 東大寺
絹本著色 室町時代(16世紀)
修二会(しゅにえ)の本尊である十一面観音が、雲に乗って二月堂の上空に現れています。右下の閼伽井屋(あかいや)付近には黒・白二羽の鵜(う)が描かれ、鵜に続いて香水(こうずい)が湧き出たというお水取りの由来にかかわる説話を表しています。説話では、二月堂の本尊は閼伽器(あかき)の上に乗って海の彼方から現れたとされますが、この絵では雲に乗って現れる「来迎(らいごう)」の姿で表されるのが印象的です。

[にがつどうえんぎ]
奈良 東大寺
紙本著色 室町時代 天文14年(1545)
修二会(しゅにえ)の創始から二月堂観音の利益(りやく)までの説話を表した絵巻です。写真は、過去帳を読み上げる鎌倉時代の僧・集慶(じゅうけい)の前に青い衣の女が現れ、読み落としを責めたので、以後、青衣女人(しょうえのにょにん)と読むようになったという場面です。

[けごんきょう(にがつどうやけぎょう)]
当館
紺紙銀字 奈良時代(8世紀)
2月5日の実忠忌(じっちゅうき)に用いられたと考えられている六十巻本の『華厳経』で、江戸時代に二月堂が全焼した際、焼け跡から発見されました。紺紙に銀泥(ぎんでい)で界線(かいせん)を施し、同じく銀泥で経文を書写しています。一部は焼け焦げながらも、紺色の料紙に浮かび上がる銀色の文字は独特の美しさを醸し出しています。

[にがつどうしゅうちゅうかこちょう]
奈良 東大寺
紙本墨書 室町~江戸時代(16~17世紀)
東大寺にゆかりのある人々、特に二月堂と関係がある人物の名が書き連ねられたもの。東大寺を創建した聖武天皇から始まり、東大寺の僧侶、寺を支援した各時代の権力者のほか、修二会(しゅにえ)の法具・袈裟(けさ)・田畑などを寄進した人々の名も数多く見られます。修二会の行法中、3月5日・12日に読み上げられます。

[こうずいしゃく]
奈良 東大寺
銅製 鎌倉時代
二月堂(にがつどう)本尊(ほんぞん)に香水(こうずい)を供えた後、堂内の参詣者(さんけいしゃ)に香水を分ける際に柄杓(ひしゃく)として用いたもので、注口のついた形はお水取り独特のものです。壺(つぼ)の側面に線(せん)刻銘(こくめい)があり、制作年代と施入者(せにゅうしゃ)がわかります。