特別陳列
特別陳列
お水取り
お水取りは東大寺二月堂でおこなわれる仏教行事で、正式には修二会(しゅにえ)と言います。行事の目的は、仏の前で罪過を懺悔すること(悔過(けか))。現在3月1日から14日間にわたっておこなわれる本行では、心身を清めた僧(練行衆(れんぎょうしゅう))が十一面観音の前で宝号を唱え、荒行によって懺悔し、あわせて天下安穏などを祈願します。
お水取り(修二会)は、天平勝宝4年(752)に東大寺の実忠和尚(じっちゅうかしょう)が初めて十一面悔過を執行して以来、一度も絶えることなく不退の行法として約1260年にわたって実施され続けてきました。そこには東大寺が歩んできた長い歴史が刻み込まれています。
本展は、毎年、東大寺でお水取りがおこなわれるこの時季にあわせて開催する恒例の企画です。実際に法会で用いられた法具や、歴史と伝統を伝える絵画、古文書、出土品などを展示します。お水取り(修二会)への理解が深まる一助となれば幸いです。

会 期
平成28年(2016)2月6日(土)~3月14日(月)
会 場
奈良国立博物館 東新館
休館日
2月15日(月)、22日(月)、29日(月)
※2月8日(月)、3月7日(月)・14日(月)は開館
開館時間
午前9時30分~午後5時
※入館は閉館の30分前まで
※2月8日(月)~14日(日)は午後8時30分まで開館(「なら瑠璃絵」開催期間中)
※3月1日(火)~11日(金)・13日(日)・14日(月)は午後6時まで開館(二月堂 お松明の期間)
※3月12日(土)は午後7時まで開館(二月堂 籠松明の日)
観覧料金
一般 | 大学生 | |
個人 | 520円 | 260円 |
団体 | 410円 | 210円 |
- 団体は20名以上です。
- 高校生以下および18歳未満の方、満70歳以上の方、障害者手帳をお持ちの方(介護者1名を含む)は無料です。
- 中学生以下の子どもと一緒に観覧される方は、団体料金が適用になります。[子どもといっしょ割引]
- この観覧料金で、同時開催の特別陳列「銅造伊豆山権現像修理記念 伊豆山神社の歴史と美術」(西新館)、名品展「珠玉の仏教美術」(西新館)もご覧になれます。
- 中国古代青銅器[坂本コレクション](青銅器館)、仏像写真展「大和の仏たち ー奈良博写真技師の眼ー」(地下回廊)、開館120年記念「写真でたどる奈良国立博物館のあゆみ」(地下回廊)は無料でご覧になれます。
- なら仏像館は改修工事のため休館中です。
出陳品
65件(うち重要文化財17件)
展覧会図録

A4版 72ページ 1,300円
*地下ミュージアムショップにて販売しております 。
*図録の購入はこちらへ
公開講座
終了いたしました
平成28年(2016)2月27日(土)「不退の行法 十一面悔過 ―「お水取り」がたどった棘の道―」
講師:橋本 聖圓 師(東大寺長老)
関連催事
終了いたしました
平成28年(2016)2月7日(日)『お水取り「講話」と「粥」の会』
平成28年(2016)3月4日(金)「お水取り展鑑賞とお松明」
ボランティア解説
終了いたしました
当館ボランティアが、展示のミニ・ツアーガイドをおこないます。
日時:3月1日(火)~3月14日(月)の毎日 14:00~(約30分)
主催
奈良国立博物館、東大寺、仏教美術協会
チラシ
主な出陳品

[にがつどうまんだら]
奈良 東大寺
絹本著色 室町時代(16世紀)
修二会(しゅにえ)の本尊である十一面観音が、雲に乗って二月堂の上空に現れています。右下の閼伽井屋(あかいや)付近には黒・白二羽の鵜(う)が描かれ、鵜に続いて香水(こうずい)が湧き出たという修二会の創始にかかわる説話を表しています。説話では、二月堂の本尊は閼伽器(あかき)の上に乗って海の彼方から現れたとされますが、この絵では雲に乗って現れる「来迎(らいごう)」の姿で表されるのが印象的です。

[にがつどうえんぎ]
奈良 東大寺
紙本著色 室町時代 天文14年(1545)
修二会(しゅにえ)の創始から二月堂観音の利益(りやく)までの説話を表した絵巻です。写真は、本尊の十一面観音に供える香水(こうずい)が湧き出た場面です。画面下の岩から白黒2羽の鵜(う)が飛び出し、そこから香水が湧き出しました。現在の閼伽井屋(あかいや)はその場所で、この香水を汲むことから修二会は「お水取り」とも呼ばれているのです。

[けごんきょう(にがつどうやけぎょう)]
当館
紺紙銀字 奈良時代(8世紀)
2月5日の実忠忌(じっちゅうき)に用いられたと考えられている六十巻本の『華厳経』で、江戸時代に二月堂が全焼した際、焼け跡から発見されました。紺紙に銀泥(ぎんでい)で界線(かいせん)を施し、同じく銀泥で経文を書写しています。一部は焼け焦げながらも、紺色の料紙に浮かび上がる銀色の文字は独特の美しさを醸し出しています。

[しゃくじょう]
奈良 東大寺
頭部=銅製 鍍金 柄=鉄製
江戸時代(18~19世紀)
錫杖は僧侶(そうりょ)の用いる道具で、山野での遊行(ゆぎょう)や托鉢(たくはつ)に用いられるほか、儀礼に当たって宗教的雰囲気を高めるためにも使用されます。本品は修二会(しゅにえ)の下七日(げしちにち)(後半の7日間)の半夜、晨朝(じんじょう)に行われる「錫杖」の儀礼に際して鈴(鐃(にょう))とともに打ち鳴らされるもので、頭部に刻まれた銘文から修二会に用いるために二月堂に寄進されたものであることがわかります。

[こうずいしゃく]
奈良 東大寺
銅製 鎌倉時代
その1:建長5年(1253)
その2:建長7年(1255)
二月堂本尊(にがつどうほんぞん)に香水(こうずい)を供えた後、堂内の参詣者(さんけいしゃ)に香水を分ける際に柄杓(ひしゃく)として用いたもので、注口のついた形はお水取り独特のものです。壺(つぼ)の側面に線刻銘(せんこくめい)があり、施入者(せにゅうしゃ)がわかります。

[にがつどうれんぎょうしゅうばん]
奈良 東大寺
木製 漆塗
鎌倉時代 永仁6年(1298)
練行衆が食堂(じきどう)で食事をとる際に用いる丸盆です。はじめは机の下に据えられ、食後に食器類を載せて片付けるのに使用されます。ケヤキの一枚板を轆轤挽(ろくろび)きで成形したのち、全面に黒漆、表には朱漆が塗り重ねられており、摩滅した朱漆からのぞく黒漆が温雅な味わいを見せています。裏面の朱漆銘から永仁6年(1298)に制作されたとわかります。