特別展・特別陳列

特別展

第67回 正倉院展

 本年の正倉院展には、北倉9件、中倉22件、南倉29件、聖語蔵(しょうごぞう)3件の、合わせて63件の宝物が出陳されます。そのうち初出陳は12件です。例年通り正倉院宝物の来歴と概要がわかるような構成ですが、最新の調査成果を反映した内容に特色がみられます。
 聖武天皇ゆかりの北倉からは、七条褐色紬袈裟(しちじょうかっしょくのつむぎのけさ)が出陳されます。袈裟は『国家珍宝帳(こっかちんぽうちょう)』の筆頭に掲げられるもので、仏教に深く帰依(きえ)した聖武天皇の信仰を伝える宝物として注目されます。また彫石横笛(ちょうせきのおうてき)・彫石尺八(ちょうせきのしゃくはち)は、石でできた珍しい管楽器で、表面に美しい浮彫文様(うきぼりもんよう)が施されています。天皇のご所用にふさわしい豪華な装飾が特色です。東大寺伝来の紫檀木画槽琵琶(したんもくがそうのびわ)、漆鼓(うるしのつづみ)とともに天平の調べに思いを馳せてみてください。
 また本年は年中行事に関わる宝物が多数出陳されます。銀・銅・鉄で作られた大きな針(はり)や赤・白・黄色の縷(る)(糸)は、手芸・裁縫の上達を祈る乞巧奠(きつこうでん)という七夕(たなばた)の行事に使用されたと考えられるものです。紅牙撥鏤尺(こうげばちるのしゃく)は象牙という高価な素材を使用し、華麗な装飾が施されており、天皇に鏤牙尺(るげしゃく)(撥鏤のものさし)を献上する2月2日の儀式に使用されたとの説があります。他に斑犀尺(はんさいのしゃく)、木尺(もくしゃく)も出陳され、様々な表情のものさしを見比べることができます。
 ところで、本年は平成21年~24年に宮内庁正倉院事務所で行われた特別調査の成果を示す宝物が出陳されるのも話題の一つです。以前の調査で鯨鬚(くじらひげ)とされていた柿柄麈尾(かきえのしゅび)の毛は猪毛だということが判明するなど、従来の説を覆す結果も今回の調査で得られました。また毛氈(もうせん)類の材質や製法についても新たな知見が得られております。最新の知見に展示品を通じてふれていただくとともに、古代の獣毛の使用法について思いを膨らませてみてください。
 このほか蘇芳地金銀絵箱(すおうじきんぎんえのはこ)や密陀絵龍虎形漆櫃(みつだえりゅうこがたのうるしのひつ)に施された流麗な絵画、柿柄麈尾や玳瑁竹形如意(たいまいのたけがたにょい)に施された精緻な細工、琥碧魚形(こはくのうおがた)や東南院古文書(とうなんいんこもんじょ)第三櫃第三十三巻から偲ばれる天平の生活様式や社会など、宝物の魅力を様々な角度からお楽しみください。

南倉 紫檀木画槽琵琶

待ち時間はこちらからご覧いただけます。
(読売新聞社のホームページにて混雑状況をお知らせしています。)

→公開は終了いたしました

会 期

平成27年(2015)10月24日(土)~11月9日(月)  全17日

会 場

奈良国立博物館 東新館・西新館

休館日

会期中無休

開館時間

午前9時~午後6時
※金曜日、土曜日、日曜日、祝日(10月24日~25日、10月30~11月1日、3日、6日~8日)は午後7時まで
※入館は閉館の30分前まで

観覧料金

 当日前売・団体オータムレイト
一般1,100円1,000円800円
高校生・大学生700円600円500円
小学生・中学生400円300円200円
  • 団体は責任者が引率する20名以上です。
  • オータムレイトチケットは、閉館の1時間30分前から入場できる当日券です(当館当日券売場のみで、閉館の2時間30分前から販売します)。購入者には記念品を進呈します。 
  • 障害者手帳をお持ちの方(介護者1名を含む)は無料です。
  • 奈良国立博物館キャンパスメンバーズ会員の学生の方は、当日券を400円でお求めいただけます。観覧券売場にてキャンパスメンバーズ会員の学生であることを申し出、学生証をご提示ください。
  • 前売券の販売は、9月9日(水)から10月23日(金)までです。
  • 観覧券は、当館観覧券売場、近鉄主要駅、近畿日本ツーリスト、JR東海ツアーズ、JTB、日本旅行、チケットぴあ・サークルK[Pコード:767-044]、ローソンチケット[Lコード:58500]、セブンイレブン、CNプレイガイド、イ―プラス(http://eplus.jp)で販売します。
  • 正倉院展の会期中、なら仏像館と青銅器館は休館しています。

出陳品

63件(北倉9件、中倉22件、南倉29件、聖語蔵3件)、うち初出陳12件

展覧会図録

A4版 144ページ 1,200円
*西新館1階会場内および、地下ミュージアムショップにて販売しております 。
*図録の購入はこちら

会場案内図

会場案内図・出陳宝物一覧・展示のみどころ等をまとめました。
下記よりダウンロードしていただけます。※展示会場内でも配布しております。

ボランティア解説

当館ボランティアによる「第67回 正倉院展」のみどころ解説を下記の予定で、期間中毎日、実施いたします。
ご鑑賞の際に合わせて、ぜひご利用下さい。

  • 期  間: 10月24日(土)~11月9日(月)の毎日
  • 場  所: 講堂(各回、先着194名様まで)
  • 料  金: 無料(ただし、正倉院展へ入館された方に限ります)
  • 所要時間: 各30分
実施時間
第1回目 :10:00~
第2回目 :11:00~
第3回目 :12:00~
第4回目 :13:30~
第5回目 :14:30~
  • ただし、10月31日(土)、11月3日(火・祝)、11月7日(土)の 各日の4回目と5回目は、講座等のため実施いたしません。
  • 各回、開始の20分前より開場します。毎年、ご好評につき各回満席になって おります。聴講をご希望のお客様は、早めに講堂へお集まり下さい。

公開講座

終了いたしました

平成27年(2015)10月31日(土) 「王朝びとの年中行事 ―文学と絵画をめぐって―」
講師:冷泉 為人氏(公益財団法人冷泉家時雨亭文庫理事長)

平成27年(2015)11月3日(火・祝) 「正倉院の仏具とその収納箱」
講師:清水 健(当館工芸考古室長)

平成27年(2015)11月7日(土) 「奈良時代の衣服」
講師:田中 陽子氏(宮内庁正倉院事務所整理室長)

古典の日記念 正倉院学術シンポジウム2015

終了いたしました

「正倉院と奈良国立博物館 ~120年のあゆみ」
日時:11月1日(日)午後1時~午後5時30分
会場:奈良県春日野国際フォーラム 甍~I・RA・KA~  ※事前申込制

音声ガイド

第67回正倉院展の会場では、3種類のプログラム(一般/はじめて編/英語)の音声ガイドをご利用いただけます。(各バージョン共に1台税込520円)

留学生の日

11月1日(日)は「留学生の日」と銘打ち、海外からの留学生の方を無料でご招待いたします。入館の際、学生証等をご提示ください。

会期中のイベント

終了いたしました

「法華寺御流によるいけばなの展示」

  •  日程:会期中毎日
  •  場所:奈良国立博物館 西新館1階ロビー
  •  ※別途「第67回正倉院展」の入館券が必要です。

「野点のお茶会」

  •  日程:会期中毎日
  •  場所:奈良国立博物館 西新館 南側ピロティー
  •  受付:西新館1Fロビー
  •  料金:500円
  •  時間:10時頃~17時(予定)
     ※別途「第67回正倉院展」の入館券が必要です。 

「小学生対象 正倉院展クイズラリー」

  • 第67回正倉院展の会期中、周辺の関連スポットを巡り、スタンプ集めとクイズを楽しむクイズラリーを行います。決まった数以上のスタンプを集めた小学生のみなさんには記念品をプレゼントします。
    ※台紙の配付や答え合わせ、記念品交換は読売新聞ブースで行います。

託児

「第67回正倉院展」開催期間中、無料の託児室を開設しますのでご利用ください。
※事前予約制

よくある質問

正倉院展について「よくある質問」をまとめましたので、ご参考にしてください。

主催

奈良国立博物館

協賛

岩谷産業、NTT 西日本、キヤノン、京都美術工芸大学、近畿日本鉄道、JR東海、JR西日本、ダイキン工業、大和ハウス工業、白鶴酒造、丸一鋼管

特別協力

読売新聞社

協力

NHK奈良放送局、奈良テレビ放送、日本香堂、仏教美術協会、ミネルヴァ書房、読売テレビ

関連リンク

読売新聞「第67回正倉院展」 公開は終了いたしました
宮内庁正倉院事務所

チラシ

主な出陳品

北倉42 山水花虫背円鏡
[さんすいかちゅうはいのえんきょう]

(山水文様の鏡) 1面
径27.4 縁厚0.7 重3258.7
附 題箋

『国家珍宝帳(こっかちんぽうちょう)』記載の白銅鏡。鏡背面の中央に山岳をかたどった鈕(ちゅう)(紐を通す孔(あな)のあるつまみ)を置いて、その周囲に水波文をめぐらし、四方に峻厳(しゅんげん)な山岳を配する。虎や鹿、兎、水鳥など、広大な自然の中に多種の鳥や動物が遊ぶ表現は卓越する。唐からの舶載品。

北倉33 彫石横笛
[ちょうせきのおうてき]

(石の横笛) 1管
長37.1 筒口の径 上2.1 下2.2

蛇紋岩(じゃもんがん)製の横笛(おうてき)。竹管をかたどり、外面全体に草花、飛雲、山岳、花喰鳥(はなくいどり)、蝶などを刻んでいる。素材・意匠ともほぼ共通していることから、もとは彫石尺八(出陳番号12)と2管で対(つい)をなしていたと思われる。『国家珍宝帳(こっかちんぽうちょう)』記載の品。

北倉34 彫石尺八
[ちょうせきのしゃくはち]

(石の尺八) 1管
長35.9 吹口径2.4

暗褐色の蛇紋岩(じゃもんがん)で作られた尺八。3節の竹管をかたどる。指孔には花形を彫り出し、外面全体にわたって草花、飛雲、山岳、花喰鳥(はなくいどり)、蝶などを左右相称に構成し、薄肉(うすにく)に刻んでいる。『国家珍宝帳(こっかちんぽうちょう)』記載の品。

南倉101 紫檀木画槽琵琶
[したんもくがそうのびわ]

(琵琶) 1面
全長98.5 最大幅40.7

四絃四柱(しげんしじ)で曲頸(きょくけい)の琵琶(びわ)。正面の捍撥(かんばち)に古様な趣(おもむき)の山水人物図を描く。背面はシタン材製で、そこに象牙(ぞうげ)や染角(緑色に染めた鹿角)、ツゲ、黒柿(くろがき)などを組み合わせ3種類の小花文を斜格子風に配している。精緻を極めた木画(もくが)の技法をみることができる。

南倉1 伎楽面 力士
[ぎがくめんりきし]

(伎楽の面) 1面
縦37.3 横26.4 奥行30.1

キリ材製で、表面に彩色(さいしき)を施した伎楽の面。髻(もとどり)を結い、ひげを生やした壮年の男で、青筋を立てた忿怒(ふんぬ)の相が表現されており、悪漢・崑崙(こんろん)を懲らしめる好漢・力士の面と推定される。裏面には「周防」の墨書があり、周防国(すおうのくに)からの貢納品と考えられる。近時の調査でひげには猪毛が用いられていることが判明した。

南倉50 柿柄麈尾
[かきえのしゅび]

(僧侶(そうりょ)の持物(じもつ)) 1柄
長61.0 鐔幅10.0

麈尾(しゅび)は僧侶(そうりょ)が手に持って威儀(いぎ)をただすのに用いる道具。2枚の細長い挟木に団扇状に獣毛を挟み、黒柿(くろがき)の柄をつける。従来、この毛は鯨鬚(くじらひげ)とされてきたが、近時の調査によって猪毛であることが確認された。

南倉51 玳瑁竹形如意
[たいまいのたけがたにょい]

(僧侶(そうりょ)の持物(じもつ)) 1柄
長60.5 掌の幅9.3

ウミガメの一種であるタイマイの背甲を用いて作られた如意(にょい)。4つの節がある竹を模している。タイマイは黄色の地に黒斑が現れる色味に特徴があるが、本品の場合その材質的な特性が、竹の表面に斑が現れる斑竹(はんちく)を思わせる効果を生んでいる。

中倉152 蘇芳地金銀絵箱
[すおうじきんぎんえのはこ]

(献物箱(けんもつばこ)) 1合
縦23.0 横31.6 高8.6

ヒノキ材製、長方形、逆印籠蓋造(ぎゃくいんろうぶたづくり)の箱。表面には蘇芳(すおう)色を塗り、金銀泥(きんぎんでい)で文様(もんよう)を表す。蓋表には四隅に花喰鳥(はなくいどり)、中央には尾長鳥(おながどり)を置き周囲を団花文(だんかもん)で囲っている。暢達した筆致で描かれた鳥や花は生動感あふれる。

北倉1 七条褐色紬袈裟
[しちじょうかっしょくのつむぎのけさ]

(羅の袈裟) 1領
幅297 縦144

『国家珍宝帳(こっかちんぽうちょう)』の筆頭に記される聖武天皇ご所持の袈裟(けさ)のうちの1領。「金剛智三蔵袈裟」と注記される。金剛智(こんごうち)(671~741)は金剛頂経(こんごうちょうぎょう)系の密教を初めて中国に伝えたインド出身の僧侶(そうりょ)で、弟子に唐代に宮廷密教を発展させた不空(ふくう)(705~774)があり、その教えは恵果(けいか)(746~805)、そして我が国に真言密教を伝えた空海(くうかい)(774~835)へと継承された。「紬」と記されるが実際には羅(薄い絹織物)である。

中倉105 琥碧魚形
[こはくのうおがた]

(魚形の腰飾り) 1具
長7.7 厚1.6(魚形)

高位の人々が身につけた佩飾具(はいしょくぐ)。魚形は深紅の透明な琥珀(こはく)製で、口や眼、ひれ、鱗などを緻密な線彫りを施し表している。繋着紐(つなぎひも)には褐色羅(かっしょくのら)が結びつけられているが、これは間縫刺繡羅帯残欠(まぬいのししゅうらのおびざんけつ)(出陳番号29)とまったく同じものであることから、もとは両者が一連のものであったことが分かる。天平期の服飾文化を伝える品である。

中倉37 筆
[ふで]

1管
管長20.4 管径2.2

筆は宝庫中倉(ちゅうそう)に実用的なものが17管伝わる。本品の穂は近時の調査で、3段構造で狸毛が使用されていることが判明した。管はマダケ属の斑竹(はんちく)で、細かな天然の斑紋が観察される。管の両端に取り付けられる毛彫(けぼり)が施された金製の覆輪(ふくりん)や、尾端の象牙(ぞうげ)製の塔形飾りといった精緻な細工はみごとである。

北倉150 花氈
[かせん]

(フェルトの敷物) 1枚
長240 幅129

花氈は今日のフェルトと同様に獣毛を縮絨(しゅくじゅう)させて作った文様(もんよう)入りの敷物。本品は大型の1枚で、裏面に「東大寺」印が3顆捺(お)されており、東大寺所用のものと考えられる。近時の調査で羊毛が使用されていることや製法が明らかになった。

中倉14 東南院古文書 第三櫃 第三十三巻 摂津国島上郡水無瀬絵図
[とうなんいんこもんじょ せっつのくにしまのかみぐんみなせえず]

(東大寺の荘園の地図) 1巻
縦28.5 長69

摂津国島上郡水無瀬に所在した東大寺の荘園を描いた彩色(さいしき)の地図。水無瀬荘は現在の大阪府三島郡島本町東大寺付近に比定される。東を上として三方を山に囲まれた荘域を表し、田畑や河川、建物が描き込まれる。東大寺の初期荘園の有様を伝える絵図として貴重なものであり、かつ彩色を伴う絵画的な山岳描写も注目される。

中倉16 続修正倉院古文書 第三十二巻
造仏所作物帳(七夕詩習書)
[ぞくしゅうしょうそういんこもんじょ
ぞうぶつしょさくもつちょう(たなばたししゅうしょ)]

(七夕の詩が習書された興福寺西金堂(さいこんどう)の造寺造仏に関する報告書) 1巻 
縦28.3~28.5

天平5年(733)から6年(734)にかけて光明皇后の発願(ほつがん)により建立(こんりゅう)された興福寺西金堂の造営に関する報告書。上から七夕に関する詩が墨書されており、詩の序と2種の詩が何度も重ね書きされている。七夕に詩を賦(ふ)すのは中国から伝来した風習で、我が国でも朝廷や貴族の邸で詩歌の会が催された。

中倉51 紅牙撥鏤尺
[こうげばちるのしゃく]

(染め象牙のものさし) 1枚
長29.7 幅2.3 厚0.8

象牙(ぞうげ)の表面を赤く染めた後、彫刻を施して図様(ずよう)を白く表す撥鏤(ばちる)技法を用いて作られたものさし。表の面には唐花文(からはなもん)と鳥を表した区を交互に配し、裏面には山岳、鳥、花、雲、飛天を表す。宝庫には8枚の撥鏤尺が伝わるが、飛天が表されたものは本品のみで、飛天の顔が隈取(くまどり)の強い独特な表情を見せる点が興味深い。

南倉168 密陀絵龍虎形漆櫃
[みつだえりゅうこがたのうるしのひつ]

(鳥獣文様(もんよう)の描かれた収納容器) 1合
縦65.8 横106.0 総高46.3

スギ材製の唐櫃(からびつ)。外面は表面に黒漆(くろうるし)を塗り、白色顔料(がんりょう)で文様(もんよう)を描き、さらにその上に油を塗って保護する、油色(ゆしょく)と呼ばれる密陀絵(みつだえ)の一種の技法を用いて、鳥獣と唐草(からくさ)文様を大胆に組み合わせた壮快な意匠を描き出している。

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